1/43のミニカーを実車のように撮影し、実車の現役時代を紹介するこのコーナー、今回はフェラーリが1980年のF1に参戦するために開発した、フェラーリ312T5を取り上げていこうと思う。
ザックリ見出し
マシンデータと戦績
まずはフェラーリ312T5の主要諸元をチェック。
年式 | 1980年 |
カテゴリー | F1 |
コンストラクター | フェラーリ |
マシン名 | 312T5 |
デザイナー | マウロ・フォルギエリ |
エンジン | フェラーリ Tipo015 3.0L 水平対向12気筒 NA |
つづいてフェラーリ312T5の戦績を見てみる。
コンストラクター | シェクター | ヴィルヌーヴ | |
---|---|---|---|
シーズン順位 | 10位 | 19位 | 14位 |
シーズンポイント | 8P | 2P | 6P |
優勝 | 0回 | 0回 | 0回 |
表彰台 | 0回 | 0回 | 0回 |
ポールポジション | 0回 | 0回 | 0回 |
ファステストラップ | 0回 | 0回 | 0回 |
フェラーリ史上No.1の駄作マシン
F1がはじまった1950年から参戦する、F1界No.1の名門チームであるフェラーリは、参戦したチームの中で一番チャンピオンを獲得してきた。
そのフェラーリが、コンストラクターズタイトルが制定された1958年以降、もっとも低迷したシーズンは何年か?
優勝1度もなく、3度の表彰台しか獲得できず、コンストラクターズ6位と低迷した2020年?
いやいや、フェラーリがもっと低迷したシーズンがあった。
それは1980年。
なんと名門フェラーリはこの年、表彰台は1度もなく最高位は5位!コンストラクターズ選手権では10位!と、チーム史上もっとも低迷した年だった。
フェラーリは1979年に312T4を投入し、ジョディ・シェクターがドライバーズチャンピオンを獲得。
さらにチームメイトの若きジル・ヴィルヌーヴも好走し、コンストラクターズタイトルも手に入れ、順風満帆なシーズンを送った。
そして迎えた翌1980年、チャンピオンマシンの312T4に大きな変更を加えて投入したのが312T5だった。
ライバルのコスワースDFV勢が幅の狭くコンパクトな形状のため、サイドポッド下のデザインで自由度が高く、グランドエフェクト効果を高めていたため、フェラーリ312T5はそのグランドエフェクト向上のためにモノコックモノコック前部の幅を80mm短縮。サスペンションアームを鋼板溶接構造に変更し、エンジンのシリンダーヘッド幅を狭めて対応したが、それにより操縦性が悪化し、エンジンの信頼性にも問題が多く出た。
また採用していたミシュランタイヤとのマッチングも最悪だった。
このシーズンにミシュランタイヤを採用していたのはフェラーリとターボエンジンによる爆発的なパワー誇るルノーだったが、ミシュランは同郷のルノーに合わせたタイヤを開発した。
そのためフェラーリはライバルよりも多くのタイヤ交換を強いられて、順位を落としていくレースが多く見られた。
その結果ヴィルヌーヴは4度の入賞しか出来ずに、シーズンの最高位はなんと5位で、チャンピオンシップは14位と低迷。
カーナンバー1を付けて参戦したディフェンディングチャンピオンのシェクターに至っては、アメリカ西グランプリでの入賞1回に留まり、チャンピオンシップ19位と悲惨な結果でシーズンを終えると、この年を最後にレーシングドライバーを引退するのだった。
では、そのフェラーリ312T5のミニカーを詳しく見ていこう。
フェラーリ312T5のミニカーを実車のように撮る!
それでは1/43のフェラーリ312T5を撮影していこうと思う。
もちろんテーマはいつものように、『実車のように撮る!』。
前年型の312T4と同様、段差がある特徴的なフロントデザインの312T5のカーナンバー2は、伝説のF1ドライバーであるジル・ヴィルヌーヴのマシン。
ちなみに息子は1997年のチャンピオン、ジャック・ヴィルヌーヴだ。
当時は多くのチームがコスワースのV型8気筒エンジンを使用していたが、フェラーリは自社開発の水平対抗12気筒を使用する。
低重心が武器のエンジンだったが、横幅が広いこのエンジンは、グランドエフェクト効果を発揮するには不向きだった。
前年型312T4からかなり伸びたフロントオーバーハングが、格段に不恰好なマシンになってしまっている。
サイドポッド下の空気を効率よくマシン後方へ跳ね上げるため、リヤタイヤ前方のボディーワークをフィン状にしたが、その形がアヒルのようだったため、そのカッコ悪いマシンのフォルムとともに、F1ファンの間では『醜いアヒルの子』というありがたくないあだ名で呼ばれた。
312T5をスターティンググリッドに移動して、一度も獲得できなかったポールポジションの位置に止めてみた。
奥に見えるのは、この年のチャンピオンマシンである、アラン・ジョーンズのウィリアムズFW07B。
この当時のフェラーリは、コクピット前方のウィンドスクリーンをブルーに着色していた。
個人的には、これがなんともイカしていると思うのだが・・・。
古き伝統を大切にするフェラーリは、かつてのホワイトラインやトリコローレのアクセントを現代のマシンでも復活させている。
ぜひこのウィンドスクリーンも、現行マシンで復活させてもらいたい。
この年の第13戦カナダグランプリで、シェクターが予選落ちという屈辱を味わっている。
予選落ちはフェラーリの歴史上唯一となる記録だ。
落ちるところまで落ちたフェラーリは、そうそうに翌年のマシン開発に着手し、まったくの新設計である126CKを誕生させる。
エンジンもまた伝統の12気筒エンジンを捨て、V型6気筒ターボを開発し、復活の道を進むのだった。
以上、1/43のフェラーリ312T5を実車のように撮影してみた。
今回登場したミニカー
今回撮影に登場したミニカーを紹介する。
【マテル製】フェラーリ312T5
2000年代中盤に、当時フェラーリのミニカーを独占契約していたマテルから発売された、特別バージョンのモデル。
チャンピオンを獲得したフェラーリ312T4は数多くモデル化されたが、まったく成績が芳しくなかったこの312T5を発売するのには、相当の勇気と覚悟が必要だったのでは、と思うのだが・・・。
【ixo製】ウィリアムズFW07・FW07B
ウィリアムズFW07B(写真左)が、デアゴスティーニF1マシンコレクションシリーズの第34号で、イタリアのixoが製造を担当。
ウィリアムズFW07(写真右)も、デアゴスティーニF1マシンコレクションシリーズの第68号でixo製。
今回の撮影機材
今回ミニカーを撮影したカメラ機材を紹介する。
カメラ | キヤノンEOS R5 |
レンズ | キヤノンRF35mm F1.8 IS STM |
スピードライト | キヤノン430EX Ⅱ |
三脚 | ベルボンEX-Macro |
最後に
最後は、同じコンセプトで製作された312T4と今回の312T5を、ほぼ同時期にマテルから発売されたミニカーで比べてみよう。
312T4はWチャンピオンに輝き、312T5はコンストラクターズチャンピオンシップで10位と、成績は雲泥の差だった2台のマシン、パッと見ると同じようなのだが・・・。
左が312T5で右が312T4。元々312T4の発展型が312T5なのだが、結構違うのがわかるだろう。
冒頭で書いたとおり、312T5はグランドエフェクトを高めるために、特徴的な312T4のコクピット前端のサイド幅を80mmも短縮している。
またホイールベースは同一なのだが、フロントカウルの下から生えたノーズがかなり伸ばされ、オーバーハングが異常に長い。
その結果、312T4の塊感のある洗練されたフォルムから、異常に間延びした不恰好な形状に変化している。
『速いマシンはかっこいい!』という古くから使われるF1界の格言があるが、フェラーリには遅くてもカッコいい1992年のF92Aや1995年の412T2などがあり、このチームだけはその格言が当てはまらないものと思っていた。
しかしここまで見ていただいた方には分かっただろう、このフェラーリ312T5の異常なカッコ悪さを・・・。
そう、フェラーリ312T5は成績とともにそのフォルムも、フェラーリ史上No.1の駄作マシンだったのだ・・・。
以上、今回は1/43のフェラーリ312T5を実車のように撮影し、実車の現役時代を振り返ってみた。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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