前回は2月上旬に発表された2022年のF1マシン5台を紹介したが、大きくレギレーションが変更した今年は、各チーム毎にマシンの形状が大きく違っていた。
そして今回発表されたマシンも、独自性が強いものばかり。
さあ、2022年マシンの残り5台を紹介していこう。
ウィリアムズ・FW44
2022年マシン6台目として2月15日に発表されたのがウィリアムズFW44。
ウィリアムズのコーポレートカラーである濃紺に水色のラインが入るカラーリング。タイトルスポンサーは現在のところ無さそうだ。
マシンの形状を見ると、まずノーズは細身でかなり丸みを帯びている。
2022年マシンは吊り下げ式ノーズが消滅して1990年代のようなノーズ形状になったが、このウィリアムズFW44は、丸みを帯びた形とカラーリングで1991年のモデナランボ291のように見えるのは私だけでは無いはず!?
そしてフロントウイングのメインプレーンは中央部が垂れ下がる。
マシン形状の最大の特徴はサイドポッド・・・いや、サイドポッドが無い。
サイドポッドのインテークから後方が窄まっており、ほとんどパワーユニットの幅のみなのだ。
2022年マシンは各マシンサイドポッドの形状に独自性があるが、このウィリアムズFW44もまた独自のスタイルで出してきた。
ロールフープの形状は他のメルセデス製パワーユニットと同様に横広の大きな楕円形タイプ。
サスペンションは、今季の多くのマシン同様に、フロントプッシュロッド、リヤプルロッドのオーソドックスな様式になる。
レギュレーションにより大きくカタチを変えた2022年のF1マシンだが、各マシンの特徴がもっとも出るのがサイドポッドにある。
その中でオーソドックスなハースをはじめとした逆三角形タイプ、アストンマーティンやアルファタウリのリヤにまで長く伸びたタイプに続き、ウィリアムズは極小さなタイプで登場した。
この積極的な手法が功を奏すか注目だ。
フェラーリ・F1-75
フェラーリの2022年マシン発表は2月17日。
F1-75という名称(事前に発表済み)は、1947年にエンツォ・フェラーリが創業してから今年で75周年という節目のマシンなので、これを記念して名付けられた。
ちなみにフェラーリとしては68台目のマシン。
垂れ下がったノーズと前後ウイングやマシン下部のブラックアウト(カーボン地)から、1980年代から1990年代のフェラーリマシンを彷彿とさせる、F1ブーム世代にとってとってどストライクのカラーリングで、特に1995年の412T2に似ていると私は感じる。
スラントノーズの先端は他のマシンのようなラウンド形状ではなく尖っている。
そしてノーズから生えたフロントウイングは、他の2022年マシンと同様に中央部が垂れ下がったカタチをしている。
サスペンションはフロントがプッシュロッド式でリヤがプルロッド式のオーソドックスなタイプ。
フェラーリは近年まで空力に有利なプルロッド式のフロントサスペンスを採用していたため、この2022年モデルでもデータを持っているプルロッド式が採用されるかとも言われていたが、オーソドックスさスタイルで落ち着いたようだ。
ロールフープの形状はフェラーリ製パワーユニットの特徴である三角形。
そしてサイドポッドは・・・上面が窪んでる!?
2022年マシンはサイドポッドに各マシンで独自のアイデアを盛り込んでいるが、フェラーリもまた他のマシンにはない独特な手法だ。
以前に見たことがある形状だなと思い返すと・・・そうだ1990年代のベネトンのマシンでも同じようにデッキ部分が凹んでいた。
そして凹んだデッキ部分のパワーユニット側の側面にはスリットが設けられ、そこから排熱された熱風をボディに沿って後方に流すのだろう。
サイドポッドの横幅は規定ギリギリまでワイドに設計されており、前述のウィリアムズFW44とは大きく異なる。
サイドポッド側面のアンダーカットはほとんど見れなく、最下部が僅かに窪んでいる程度だ。
そんな大きなサイドポッドから一転して、マシン上部のエンジンカバーはコンパクトに設計されており、それによりリヤウイングに多くの空気を当てようとしている。
F1ブーム世代にとっては馴染み深いレッドとブラックのカラーリングに戻った2022年のフェラーリF1-75は、サイドポッドを中心に独特の空力処理を施してきた。
このマシンが古豪復活へと導いてくれるのか楽しみだ。
メルセデスAMG・F1 W13 E Performance
フェラーリF1-75の翌日、2月18日に発表されたのが、メルセデスAMG F1 W13 E Performance(以下メルセデスW13)だ。
近年ブラック基調のカラーリングにしていたメルセデスだが、W13では3年ぶりにシルバーアローが復活した。
マシン形状をフロントから見ていこう。
ノーズは、メルセデスが採用してから各マシンに広がった細ノーズをW13でも踏襲している。
フロントウイングは4枚のエレメントで構成されており、メインプレーンはノーズと結合しこれまで発表した多くのマシンと同様にセンター部分が垂れ下がる形状だ。
その他の3枚の形状は強い山型にはね上げられている。
フロントサスペンスはプッシュロッド式で、翼断面形状のカバーで覆われている。
サイドポッドは前端がミラーの位置まで伸び、エアインテークは正方形に近い角形の形状。
サイド幅はスリムで、アンダーカットもほとんど無いようだ。
そしてサイドポッド後方は、まるでウィリアムズFW44のような出っ張りが非常に少ない形状をしており、エンジンカバーからストンとフロアまでほぼ同じ幅を保っている。
そのためコークボトルと呼ばれる絞り込みもないほどにスリムにまとめられている。
ロールフープは他のメルセデスパワーユニット勢と同様に横広の楕円形だ。
リヤサスペンションはプルロッド式で、ロアーアームのマシン側は前方まで伸びていないようだ。
元々ローレーキコンセプトだったメルセデスにとって、ウイングカー構造の2022年規定では大きなアドバンテージになると考えれる。
その中で徹底的にコンパクト化を突き詰めたW13。
2022年はこのマシンで史上初の9年連続コンストラクターズタイトル獲得を目指す。
アルピーヌ・A522
アルピーヌは2月22日に新型マシンA522を発表した。
マシンのカラーリングは昨年のメタリックブルーから大きく変更になり、今シーズンからタイトルスポンサーになったBWTのピンクがサイドポッドや前後のウイングに入り、随分と印象が変わった。
しかしアロンソおじさん・・・ピンク似合わないよね・・・。
マシンのデザインをフロントから順に見ていこう。
昨シーズンのA521はモノコック前端までが太く、そこからフロントノーズが一気に細くなっていたが、今シーズンのマシンはモノコックからノーズにかけての段差がなく、スマートに細く伸びている。
フロントウイングのメインプレーンはノーズと直結しておらず、中央部は垂れ下がる2022年マシンの一般的なデザインだ。
2-4枚目のフラップは多くのマシンのように山形に盛り上がってはいない。
サスペンションはフロントがプッシュロッド式リヤがプルロッド式で、他の多くのマシンと同様だ。
2022年マシンの個性が出るサイドポッドの形状はどうか。
サイドポッド前端はあまり前方まで伸びておらず、そこからリヤにかけて下方向に下がっていき、フロア近くにまで到達する。
このデザインはアルファタウリAT03に似ている。
パワーユニット排熱用のスリット付近のデザインが気になる。
アルピーヌのみが搭載するルノー製パワーユニットE-Tech RE22は、今シーズン大きなモデルチェンジを受けたが、大柄なのかエンジンカウルがかなり膨らんでおり、空力面で不利になりそうに見えるのだが果たして・・・。
昨シーズンは混戦のハンガリーグランプリにおいて、念願の優勝を果たしたアルピーヌ。
上り調子のエンストンのチームは、マシンレギュレーションが大きく変わった今年、1990年代のベネトン時代や2000年代のルノー時代の頃のようなトップチームに返り咲くことができるのか、注目だ。
アルファロメオ・C42
アルファロメオの新マシンC42は2月27日に発表を予定しているが、正式発表前の2月15日にバルセロナで新車のシェイクダウンを済ませている。
上記の1枚の写真を見ると、フロントウイングは他の多くのマシンとは逆にメインプレーンの中央部が持ち上がっているようで、メインプレーンを含めたすべての羽がノーズと直結している。
そしてサイドポッドは後方に長く伸びている大柄なタイプを採用している。
全体的なフォルムとしてはアストンマーティンに似た形状。
まとめ
今回はウィリアムズ、フェラーリ、メルセデス、アルピーヌ、アルファロメオの2022年マシンを見てきたが、各マシン特徴が有り、じつに興味深かった。
特に大きくレギュレーションが変更となった2022年マシンは、サイドポッドの形状に各チーム独自のアイデアがある。
先に発表したハース、レッドブル、アストンマーティン、アルファタウリ、マクラーレンでは、ハースなどのオーソドックスな三角形の形状をしたタイプと、アストンマーティンなどの長く伸びた大柄なタイプに分けれれたが、今回は新たな形状が加わった。
それはメルセデスやウィリアムズの超コンパクトタイプと、フェラーリの上面を窪ませたタイプだ。
昨年までのF1はレギュレーションが安定していたため、どのマシンも同じような形状だったが、大変革の2022年マシンは特徴があってじつに面白い。
その中でどのマシンが正解なのか。
まずは3月20日に決勝を迎えるバーレーンで、そのマシンの実力を測りたい。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。
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