※前置きが長いので、急いでいる方は下記目次の『3 F1と他のフォーミュラカーの違い』をクリック願います。
初めて見たレース
『1996年 全日本選手権フォーミュラニッポン 第7戦 富士スピードウェイ』私がサーキットへ初めて観戦に行ったレースです。
それまでもテレビでは狂う程にF1は観てきたが国内レースの知識はなく、知っているドライバーは星野一義やラルフシューマッハぐらいだったか、あっ近藤真彦も知っていました、別の意味で。
この時初めて生で観たレースの感動は、20年以上経った今でも忘れていません。
ホームストレートを駆け抜けるフォーミュラカーの爆音とタイヤの焼けた匂い、オイルの焼けた匂い・・・。
当時のプログラムを読み返してみます。
シャシーはローラありレイナードあり童夢あり、同じメーカーでもハイノーズにローノーズ、エンジンは無限・ジャッド・コスワースDFV、タイヤもブリヂストンとYOKOHAMA。
まだまだ残るF1人気の最中、改修前の富士スピードウェイの汚いグランドスタンドには大勢のファンが歓声をあげていました。
自由でいいねーこの時代。
2017年3月12日撮影 1991年F3000 LOLA T90/50 & 1992年F3 RALT R35
現在のフォーミュラレース
それに比べて昨今のフォーミュラレースは、世界的にみても人気が低下しています。
日本のスーパーフォーミュラなども例に漏れず、2016年の富士戦は2日合計で3万5100人(参考=同年スーパーGT富士戦8万5800人)と閑古鳥が泣いている有様です。
それに比べF1は前年に比べ8%の来場者増加と、世界的に見れば人気が増加し続けています(参考=2017年日本GP3日合計13万7000人、母国ドライバー不在の為日本では低下傾向だが世界では増加)。
F1と他のフォーミュラカー違い
前置きが長くなってしまったがそれでは本題に入ります。
F1と他のフォーミュラカー、同じような形をしたマシンですが、特にF1とスーパーフォーミュラの違うところを書いてみたいと思います。
シャシー
フォーミュラレースの中でF1は他のカテゴリーと大きく違う事があります。
コンコルド協定(F1のルールを定めた協定)の中でチームはコンストラクター(レーシングカー製造者)でなくてはならない、と謳われています。
そこでF1チームを発足する際、他のカテゴリーとは大きく違いマシンをデザインする人材が必要となります。
他のカテゴリーではコスト削減とドライバーの力量を探るため、同じシャシー(=ワンメイク)でのシリーズが圧倒的に多いです。
そこで、2017年現在のフォーミュラカーシリーズのシャシー製造メーカーを下記の通りまとめてみました。
カテゴリー | 製造メーカー |
F1 |
新興チーム“ハース”を除き全て自社生産で、フェラーリ製・マクラーレン製・ウィリアムズ製… |
スーパーフォーミュラ | ダラーラ製ワンメイク |
F2(旧GP2) | ダラーラ製ワンメイク |
F3 | ダラーラ製が主流、ミゲール製・ローラ製も少数存在 |
FIA-F4(日本) | 童夢製ワンメイク |
イギリスF4 | ミゲール製ワンメイク |
ADACF4 | タトゥース製ワンメイク |
イタリアF4 | タトゥース製ワンメイク |
中国F4 | ミゲール製ワンメイク |
GP3 | ダラーラ製ワンメイク |
インディカー | ダラーラ製ワンメイク |
フォーミュラE | スパーク製ワンメイク |
分かってはいた事ですが、あらためて表にするとダラーラ製の車両が圧倒的に多いのが驚きですね。
人員
レーシングチームでは多くの人間が働いています。
有名どころではチームマネージャーやチーフエンジニア、エアロダイナミストなどが日の目を浴びますが、メカニック・進行マネージャー・ドライバーマネージャー・トラックドライバー、またサーキットに訪れない人員も多数います。
その人の数からチームの規模が見えてきます。
古い資料ですが2006年のF1スタッフ人数をまとめてみました。
カテゴリー | チーム | スタッフ人数 |
F1 | フェラーリ | 800人 |
ルノー | 650人 | |
マクラーレン | 800人 | |
ホンダ | 750人 | |
トヨタ | 650人 | |
BMW | 370人 | |
ウィリアムズ | 500人 | |
レッドブル | 450人 | |
トロロッソ | 150人 | |
ミッドランド | 200人 | |
スーパーアグリ | 140人 | |
スーパーフォーミュラ | 各チーム | 30人 |
当時の新規参戦チームスーパーアグリでも140人規模で、急速に人員を採用していたと記憶しています。
それに比べてスーパーフォーミュラは約30人、ここでも下位カテゴリーとF1との規模の差が歴然ですね。
極限のマシンを生み出し、世界を飛び回るF1はまさに企業体です。
予算
F1はシャシーを開発し製造しなくてはならないし、パワーユニット(エンジン他動力源)に関しては、一部内製のチームを除き膨大な資金で購入しなくてはなりません。
人件費でもドライバーの契約料はトップドライバーともなると数十億に達する他、スタッフも数百人規模になります。
よってF1チームの年間総予算は膨大な金額になります。
それでは、F1の各チームとスーパーフォーミュラの年間予算を比べてみましょう。
※F1のチーム予算は2015年、スーパーフォーミュラは予測
カテゴリー | チーム | 年間総予算 |
F1 | レッドブル | 649億円 |
メルセデスAMG | 647億円 | |
マクラーレン | 644億円 | |
フェラーリ | 580億円 | |
ウィリアムズ | 258億円 | |
ロータス | 192億円 | |
トロロッソ | 190億円 | |
フォースインディア | 180億円 | |
ザウバー | 143億円 | |
マルシャ | 115億円 | |
スーパーフォーミュラ | 各チーム | 3〜4億円 ※ダラーラSF14が1台1億円 2台走らせパーツ代スタッフ代エンジン代諸々で3〜4億円と推測 |
※ベストカーWeb参照
それにしてもF1上位4チームの予算には驚かされます。
スーパーフォーミュラはF1の100分の1の予算規模です。
ラップタイム
次に1周あたりのラップタイムはどうでしょう。
そこで、F1開催の実績を持つ日本のサーキット、鈴鹿サーキットと富士スピードウェイのラップタイムを各カテゴリーごと比べてみました。
サーキット | カテゴリー | ラップタイム |
鈴鹿サーキット | F1 | 1分27秒319(2017) |
スーパーフォーミュラ | 1分35秒907(2017) | |
F3 | 1分50秒999(2017) | |
FIA-F4 | 2分08秒192(2015) | |
富士スピードウェイ | F1 | 1分17秒287(2008年) |
スーパーフォーミュラ | 1分22秒572(2014年) | |
F3 | 1分33秒451(2009年) | |
FIA-F4 | 1分44秒733(2017年) |
先ほど書いた予算差と比べると、F1とスーパーフォーミュラのラップタイム差は意外と少ないことに驚かされます。
富士スピードウェイでのF1とスーパーフォーミュラの差が約5秒。
今後富士スピードウェイでのF1開催の可能性は低いため、2019年新型車両導入とともにスーパーフォーミュラがラップレコードを塗り替える可能性があるのでしょうか?
まとめ
冒頭に書いた1996年当時、F1と直下カテゴリーのフォーミュラニッポンとは今ほど大きな差はありませんでした。
しかしその直後から自動車メーカーが多くF1に参戦し、多くの資金と人材を注ぎ込み予算が高騰し続けました。
リーマンショックとともにホンダ・トヨタ・BMWなどの自動車メーカーはF1を去りましたが、F1に後退という言葉はなくその規模を維持し続けなければ上位争いはできなくなってしまいました。
逆にその他のフォーミュラシリーズは、参戦資金を抑えるためシャシー・タイヤとワンメイク化が進んでいきました。
F1とスーパーフォーミュラなど他のフォーミュラシリーズの差は大きくなってしまいましたが、ドライバーの熱いバトル、チームの情熱は変わらないと思います。
私はあの時見た1996年以来、その大好きなフォーミュラレースを観戦しに、サーキットに通い続けています。
2017年3月12日撮影 2011年フォーミュラニッポンFN09
最後までお読みいただきありがとうございました。
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