プジョー・A6(1994)決勝でのエンジンブロー9回!信頼性崩壊エンジン!
- 参戦年度:1994年
- 搭載マシン:マクラーレンMP4/9
- 出走:16
- 総獲得ポイント:42
プジョーのモータースポーツ活動といえばル・マン24時間などのスポーツカーレースやラリーが有名ですが、1990年代にはF1にエンジンを供給していました。
そんなプジョーが初めてF1にエンジンを供給したのが1994年で供給先はマクラーレン。
時は同じフランスのルノーエンジンが全盛を誇っていた時代で、ライバルであるプジョーも負けじとF1にワークス体制で参戦をしました。
そんなプジョーA6エンジンは開幕戦でミカ・ハッキネンのエンジンがブロー。その原因が熱量問題とわかり第2戦(TIサーキット英田)からラジエターを大型化しますが、今度はマーティン・ブランドルのエンジンが6周しか持たずにオーバーヒート。
その後もエンジンブローを繰り返すプジョーA6。
第3戦のサンマリノグランプリでは初めて2台が揃って完走をしますが、第5戦のスペイングランプリではハッキネンのエンジンがまたしてもブロー。続く第6戦のカナダグランプリでもハッキネンのマシンがエンジンブロー。第7戦の地元フランスグランプリでは2台が揃ってエンジンブローして信頼性が崩壊。
極め付きが第8戦イギリスグランプリで、ブランドルのマシンがスタート直後にロケットのような火を噴き、ブランドルはレース後、後方グリッドにいたマーク・ブランデルを「危うく燻製にするところだった」と皮肉めいた言葉で語っています。
以下が1994年シーズンのプジョーA6エンジンブローが決勝でのリタイヤ原因となった一覧です。
- ミカ・ハッキネン:開幕戦、第5戦、第6戦、第7戦 合計4回
- マーティン・ブランドル:第2戦、第7戦、第8戦、第9戦、第14戦 合計5回
なんと決勝でのエンジンブローが原因でのリタイヤが9回!さらにフリー走行や予選でも数え切れないほどのプジョーA6が消費されました・・・。
後半戦ではやや信頼性を取り戻すも出力でもライバルには劣り、14年ぶりに未勝利に終わったマクラーレンとの信頼関係はすでに崩壊状態。
結局複数年契約だったマクラーレンとプジョーの契約はこのシーズン限りで打ち切りになり、翌年からマクラーレンはイルモアが開発するメルセデスエンジンに、プジョーは中団勢のジョーダンに供給先を変更することになりました。
ホンダ・RA615H(2015)GP2エンジンと比喩された超非力で壊れまくりのPU!
- 参戦年度:2015年
- 搭載マシン:マクラーレンMP4-30
- 出走:19
- 総獲得ポイント:27
時代は大きく飛び2015年。2014年からF1はエンジン、ターボ、MGU-K、MGU-H、ES、CEの6つのコンポーネントからなるパワーユニット時代になり、その1年後の2015年にF1に復帰したのがホンダ。
供給するチームはマクラーレンで、F1ファンは1980年代終盤から1990年代初頭にF1を席巻したマクラーレンホンダの復活に注目しました。
しかしテスト段階から信頼性が露呈。なおかつパワーも当時のトップパワーユニットだったメルセデスはおろか、フェラーリやルノーにもまったく歯が立たず、ホンダの地元で開催された日本グランプリでは、当時のマクラーレンホンダのエースフェルナンド・アロンソ選手から無線で、
「GP2エンジン!」
と言い放たれてしまいました。
そんなホンダ製パワーユニットですが、壊れまくったのには理由がありました。
それはサイズゼロ。
パートナーを組むマクラーレンからホンダに対し空力を有利にしたいため、パワーユニットは極々小さく設計して欲しいと要望がありました。
真面目な日本人はマクラーレンの言ったことを忠実に実行して非常にコンパクトにデザインしましたが、無理のある設計のためにパワー不足や信頼性不足、また冷却の不足やMGU-Hの発電不足からのデプロイメント切れなど、多くの弊害を巻き起こしました。
その後ホンダ製パワーユニットは徐々に性能と信頼性を向上して最強と謳わられるまでに成長するのですが、それはレッドブルと組んだ後。第2期マクラーレンホンダ時代は試行錯誤の連続で、マクラーレンとは3年間の短いジョイントの末、提携を解消するのでした。
フェラーリ・Tipo 065(2020)突如パワーダウンした疑惑のPU
- 参戦年度:2020年
- 搭載マシン:フェラーリSF1000、アルファロメオC39、ハースVF-20
- 出走:17×3
- 総獲得ポイント:131(フェラーリ)、8(アルファロメオ)、3(ハース)
フェラーリが2019年のシリーズ後半からいきなりパワーアップを遂げて、予選でたびたびポールポジションを獲得したのを覚えていますか?
そんなフェラーリのパワーユニットに疑惑が浮上。当時のF1は周回あたりの燃料流量を制限していますが、それを不正に回避して出力を向上しているのではないか、と多くのチームから声が上がりました。
それを受けてFIAが技術調査を開始しましたが結果はお咎めなし。FIAは「フェラーリと和解に達した」とだけ声明を発表しました。
しかし翌2020年シーズンのフェラーリのパワーユニットは突如としてパワーダウン。
特に長いストレートでは他のパワーユニットを使用するマシンにDRSも使われずにあっさりと抜かれる有様で、高速コースとして名高いイタリアのモンツァやベルギーのスパフランコルシャンではともに予選最高位が13位と、最高速がまったく上がらないダメエンジンに変貌しました。
その最高速が伸びない症状はフェラーリTipo065を搭載するアルファロメオやハースも同様でした。
結局フェラーリはこのシーズンのコンストラクターズランキングで6位と低迷。しかしこのランキングは所属したセバスチャン・ベッテル選手やシャルル・ルクレール選手という一戦級のドライバーのおかげ。マシンのパフォーマンスだけならばもっと下位に低迷していただろうと、当時の走りを見ていたら容易に想像がつく酷い有様でした。
最後に
今回は1990年以降にF1マシンに搭載されたダメエンジンを6機紹介しました。
ライフF35以外はどれも世界に名を馳す自動車メーカーが期待を込めて開発をし実践投入したエンジンでしたが、結果は期待を大幅に下回り、各メーカーにとっては隠したい気持ちだと思います。
大企業の多くの優秀なエンジニアが情熱を持って開発をしても、時として失敗があるからモータースポーツは面白いのです!
最後までご覧いただきありがとうございました。