日本のトップフォーミュラはかつて、さまざまなシャシーコンストラクターがエントリーしており、特に全日本F3000時代(1987-1995)にはマーチ、ローラ、ラルト、レイナードといったヨーロッパ勢や、日本のムーンクラフトや童夢など、多くのコンストラクターが鎬を削った。
1996年からシリーズ名称がフォーミュラニッポンに変わると徐々に集約され、レイナードの事実上のワンメイクになるも、2002年にそのレイナードが倒産をし、2003年からはレギュレーションで正式にワンメイク化がなされた。
そこで今回は、2003年以降の日本トップフォーミュラで採用されたワンメイクマシンをすべて紹介してみようと思う。
ローラ・B351
レイナードが倒産し2002年限りで使用期限が切れたため、2003年シーズンからフォーミュラニッポンのワンメイクマシンとして採用されたのがローラ製のB351だった。
当時の国際F3000マシンをベースにフォーミュラニッポン用に手直ししたローラB351は、2002年まで全チームが使用(ワンメイクではない)していたレイナードと比べると全幅が200mmも縮小し、当時のF1マシンと同じ1800mmとかなりスリムになった。
またホイールベースも当時のF1マシンと同様に前年のレイナードと比べると100mmも伸び、細く長くなったマシンは見た目同様にマシンの動きがだるくなり、コーナーで曲がらないマシンになったという。
ローラ・B06/51
- 使用期間・・・2006年〜2008年
- 全長・・・4667.5mm(+156.5mm)
- 全幅・・・1879mm(+79mm)
- トレッド・・・前1503mm/後1389mm
- ホイールベース・・・3000mm(±0mm)
※カッコは前マシンローラB351との比較
フォーミュラニッポンで2006年から3年間使用されたのがローラ製のB06/51である。
ちなみにJRPではFN06という名称だったので、こちらの方が馴染みの深い方も多いだろう。
このマシンの最大の特徴はウイングカー構造。
2022年からF1マシンがグランドエフェクトカーを復活させているが、その20年近く前にフォーミュラニッポンで復活させていたのだ。
それにより前マシンのローラB351からダウンフォース量は10%増大し、さらに2007年にはサイドポッド側面下にスカートも追加。
これによりコーナーリングスピードが一気に速くなった。
しかし当時のフォーミュラニッポンではパワーステアリングが装着されていなく、ドライバーから、
「ステアリングが重すぎる」
という声が殺到したため、2008年からパドルシフトを採用し、ドライバーへの負担軽減を図っている。
スウィフト・017.n
- 使用期間・・・2009年〜2013年
- 全長・・・4775mm(+107.5mm)
- 全幅・・・2000mm(+121mm)
- ホイールベース・・・3000mm(±0mm)
※カッコは前マシンローラB06/51との比較
2009年から2012年のフォーミュラニッポンおよび、2013年のスーパーフォーミュラで採用されたマシンがスウィフトエンジニアリング製のスウィフト017.nである。
JRPでの呼称はFN09(2009-2012)、およびSF13(SF13)。
他のフォーミュラカテゴリーでは見られない前衛的なエクステリアが特徴のマシンで、デビューから十数年経過した今見ても、古く見えないデザインだと個人的には思う。
特徴的な2段式のフロントウイングは、2008年までF1で流行っていたアッパーノーズウイングを発展させたと思われる。
また一般的なフォーミュラカーにはロールバーにインダクションポッドが存在するが、このスウィフト017.nには存在せず、エンジンへのエアはロールバーの後ろにあるルーバーから行っている。
ちなみにスウィフトエンジニアリング(オーナーは松下幸之助の孫で元CARTドライバーのヒロ松下)はアメリカに本拠を置く企業で、1997年から2000年にかけてCART(チャンプカー)にマシンを供給しており、このマシンも元々そのCARTの流れを汲むインディカーシリーズ用に設計されたため、かなり当時のインディカーに近い形状をしている。
ダラーラ・SF14
- 使用期間・・・2014年〜2018年
- 全長・・・5268mm(+493mm)
- 全幅・・・1900mm(-100mm)
- ホイールベース・・・3165mm(+165mm)
※カッコは前マシンスウィフト017.nとの比較
2013年よりシリーズ名称がスーパーフォーミュラに変わった日本トップフォーミュラだが、シリーズ2年目にマシンがイタリアのダラーラ製シャシー、ダラーラSF14に変更されている。
ダラーラによるとマシンの開発コンセプトは『クイック&ライト』とされ、マシンは前年まで使用したスウィフト・017.nに比べると62kg軽く、減速や加速、そしてコーナーリングパフォーマンスに重点を置かれた。
スウィフト製シャシーはインディカーに近かったが、F1のハースチームのマシン製造も手がけるダラーラだけあり、SF14のフォルムは我々が見慣れたF1マシンに似通った形状になった。
F1マシンの全長が年々長くなっているように、このダラーラSF14の全長も一気に長くなり5268mmに、そしてホイールベースは3165mmに長くなった。
またこの年からNRE規格のコンパクトなエンジンを搭載したため、マシンの後部の絞り込みはF1のように極端に絞り込まれたコークボトル形状になった。
現在スーパーフォーミュラではオーバーテイクシステムが搭載されているが、このシステムが採用されたのがこのダラーラSF14から。
当時のオーバーテイクシステムはドライバーがボタンを押すと20秒間燃料流量が5kg/h増し、約50馬力パワーアップし、1レースにつき5回使用できた。
その後2015年からは燃料流量が10kg/hに引き上げられ、100馬力近いパワーアップに変更されている。
ダラーラ・SF19
- 使用期間・・・2019年〜2022年
- 全長・・・5233mm(-35mm)
- 全幅・・・1910mm(+10mm)
- ホイールベース・・・3115mm(-50mm)
※カッコは前マシンダラーラSF14との比較
2018年まで使用されたダラーラSF14の後継マシンが同じダラーラ社製のダラーラSF19だ。
このマシンは1994年の全日本F3000チャンピオンであるマルコ・アピチェラが開発に関わったマシンで、2018年7月4日に富士スピードウェイでシェイクダウンが行われた。
開発コンセプトは前マシンのダラーラSF14と同様に『クイック&ライト』とされ、前マシンよりもオーバーテイクをしやすいように空力特性を見直している。
今回よりホイールベースが50mm短縮され、またフロントタイヤの幅が20mm拡大されたこともあり、
「曲がりすぎるくらいよく曲がる」
という声がドライバーから多く聞かれた。
外観状の特徴ではまずノーズ先端が前マシンよりかなり低くなった。これは安全基準に沿った変更だという。
またフロントウイングならびにリヤウイングに後退角がつけられたほか、ポッドウイングも装着され、よりF1マシンの形状に近くなっている。
そして近年の多くのフォーミュラカテゴリーと同様に、このダラーラSF19でもHaloが装着された。
まとめ
今回は2003年よりはじまった日本トップフォーミュラのワンメイクマシンを紹介したが、まとめると以下のとおり。
製造 | マシン | 使用期間 | 全長 | 全幅 | WB |
---|---|---|---|---|---|
ローラ | B351 | 2003-2005 | 4511mm | 1800mm | 3000mm |
ローラ | B06/51 | 2006-2008 | 4667.5mm | 1879mm | 3000mm |
スウィフト | 017.n | 2009-2013 | 4775mm | 2000mm | 3000mm |
ダラーラ | SF14 | 2014-2018 | 5268mm | 1900mm | 3165mm |
ダラーラ | SF19 | 2019-2022 | 5233mm | 1910mm | 3115mm |
製造会社は当初ローラ製だったが、2009年よりアメリカのスウィフト製になり、2014年からは世界各国で多くのフォーミュラカテゴリーのマシンを手掛けるダラーラ製になった。
マシンの全長はモデルチェンジごとに長くなったがダラーラSF19では若干短くなり、ホイールベースの延長も落ち着いたようだ。
全幅は2002年以前のレイナード時代からローラになりF1と同様の1800mmになったが、その後スウィフト017.nで2000mmに戻され、ダラーラ製になってからは1900mmに縮小され、現行のSF19では1910mmになっている。
2022年現在の現行マシンであるダラーラSF19は2022年でその役割を終え、2023年以降のスーパーフォーミュラはこのSF19をベースに開発を行っているという。
その次期スーパーフォーミュラのマシン(おそらくSF23と命名されるだろう)の開発コンセプトのひとつが『ドライバーの力が最大限引き出せるエアロダイナミクスの改善』。
まさしく、それを期待したい。
もちろんエンターテイメント性も大切な要素だが、ドライバーの実力差で勝敗が決まるマシンであってもらいたい。
そう、このカテゴリーは日本が誇るトップフォーミュラなのだから。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。
※カッコは前マシンレイナードとの比較