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【年々長くなるF1マシン】ホイールベース延長の歴史を辿る

最近のF1マシンを見て、多くの方はホイールベースが長いことに驚きを感じるだろう。

そう、近年のF1マシンのホイールベースは3600mmを超えており、長いマシンでは3760mmに達する。

これは市販車の中でも長いとされる、メルセデスベンツS500ロング(7台目のW223)のホイールベース3215mmをはるかに超えているのだ。

それに13インチの小径ホイールが装着されるF1マシンは、サイドから見るとお世辞にもかっこいいとは言えない・・・いや不恰好だ。

そんなF1マシンも、かつては市販車とほぼ変わらないホイールベースだった。

それがいつからあの様な長いホイールベースになったのか。

そこで今回は、F1のホイールベースが延長された歴史を、F1黎明期から順に辿っていこうと思う。

文中のホイールベースの数値はチームが発表したものではなく、あくまでも推定の数値になる

【1950年代から1960年代前半】F1黎明期のホイールベース

1965年のホンダRA272のホイールベースは2300mm
2019年ホンダコレクションホールにて

約2300mm

マシンホイールベース
1959クーパーT512310mm
1965ホンダRA2722300mm
デアゴスティーニF1マシンコレクションの冊子より

ミッドシップレイアウトのマシンで初のチャンピオンになった、1959年のクーパーT51のホイールベースは2310mmで、現在のF1マシンに比べると1400mm以上も短かった。

ちなみに現行のカローラのホイールベースが2640mmだから、それよりも330mmも短いことになる。

1960年代に入ってもF1マシンのホイールベースは2300mm前後。

1961年からは排気量が1.5Lと、エンジンがかなりコンパクトだったことも影響しているのだろう。

1965年のホンダF1活動第1期のマシンホンダRA272は、V型12気筒1.5Lエンジンをなんと横置きで搭載しており、ホイールベースは2300mmだった。

実際に当時のF1マシンを見ると、明らかに「小さいなあ」と思ってしまう。

【1960年代後半】3.0Lエンジンに変更後のホイールベース

1967年ホンダRA300のホイールベースは2454mm
2019年ホンダコレクションホールにて

約2450mm

マシンホイールベース
1966ホンダRA2732510mm
1967ホンダRA3002454mm
1968ホンダRA3012410mm

1966年からF1エンジンの排気量は前年の2倍の3.0Lになり、それに伴いエンジンの全長が長くなる。

その結果、前年まで横置きにエンジンを搭載していたホンダは一般的な縦置きに変更し、ホイールベースが210mm伸びた。

ただこのマシンはかなり大柄で、エンジンも大きなV型12気筒を採用していたため、V型8気筒(多くはコスワースDFV)を搭載する他の多くのチームのホイールベースは2400mmほどだった。

実際ホンダもこの大きな車体を懸念しており、ローラと共同開発した翌年のRA300のホイールベースは2454mmに、そしてその後に登場するRA301のホイールベースは2410mmと、年々短くなっている。

【1970年代前半】前後ウイングが装着された頃のホイールベース

1970年代前半は前後ウイングが装着されオーバーハングが長くなったがホイールベースはわずかに伸びただけ 写真は1970年ロータス72C
2018年鈴鹿サウンドオブエンジンにて

約2550mm

マシンホイールベース
1971ロータス56B2591mm
1973フェラーリ312B2507mm
1975ヘスケス308B2540mm
1976フェラーリ312T22560mm
デアゴスティーニF1マシンコレクションの冊子より

空気が邪魔なものからダウンフォースを生み出すものとして、考え方が大きく変わった1970年代前半のF1マシンの前後には、大きなウイングが装着されオーバーハングがかなり伸びている。

そんな当時のホイールベースは各マシン2550mm前後と、1950年代から比べると250mmほど延長されている。

この数値は当時の市販車のホイールベースとほぼ同じだ。

【1970年代後半から1980年代前半】グランドエフェクトカー時代のホイールベース

ウイングカー時代はホイールベースが伸びた 写真は1980年ブラバムBT49
2018年鈴鹿サウンドオブエンジンにて

約2700mm

マシンホイールベース
1977ロータス782743mm
1979ロータス802743mm
1981マクラーレンMP4/12640mm
1982ティレル0112692mm
デアゴスティーニF1マシンコレクションの冊子より

1970年代中盤までは2550mm前後のホイールベースだったF1マシンだが、1977年にロータス78の登場とともに150mmほどホイールベースが伸びる。

そう、ロータス78はF1にグランドエフェクト効果をもたらした画期的なマシンで、他のチームもそれを追随した(通称グランドエフェクトカー)。

グランドエフェクトカーとは、マシンの裏側を航空機の羽と逆の形状にしてダウンフォースを稼ぐことを目的に設計されたマシンだ。

その結果、それ以降のすべてのF1マシンは、グランドエフェクト効果を最大限利用するためにホイールベースが2700mm前後まで延長された。

【1980年代】ターボ時代のホイールベース

ターボ時代はウイングカー時代と変わらぬホイールベースだった 写真はロータス99T
2019年ホンダコレクションホールにて

約2750mm

マシンホイールベース
1986ロータス98T2718mm
1988ロータス100T2776mm
デアゴスティーニF1マシンコレクションの冊子より

グランドエフェクトカーによりコーナーリングスピードが速くなり、それにより多くの事故が発生したため、1983年よりフラットボトム規制が導入され前後輪の下部はフラットになった。

それによりホイールベースが短くなると思われるが、同時に1983年から給油が禁止されるため燃料タンク容量が大きくなり、ホイールベースに大きな変化はなかった。

その後、この頃から主役になるターボエンジンの技術進化でパワーが増す中、それを規制しようと燃料タンク容量が小さくなるも、その後もホイールベースは2750mm前後で推移する。

【1990年代前半】ターボ禁止後のホイールベース

ターボ禁止でホイールベースは一気に伸びる 写真はティレル019
2019年鈴鹿サウンドオブエンジンにて

約2950mm

マシンホイールベース
1989ティレル0182920mm
1991マクラーレンMP4/62974mm
1992マクラーレンMP4/7A2972mm
デアゴスティーニF1マシンコレクションの冊子より

1989年からF1はターボが禁止され参戦する全マシンがNAになると、ホイールベースは一気に200mmほど伸びた。

理由は定かではないが、それまでターボの爆発的パワーに頼っていたF1マシンがターボを失い、コーナーリングスピードを重きを置き設計されたからだと筆者は考える。

「いや、ホイールベースが短い方が旋回性能が高まるでしょ」と思う方も多いと思うが、F1ではその考えが当てはまらない。

F1マシンのコーナーリングスピードは圧倒的に速く、コーナーによっては当時でも4Gに迫るほどの遠心力がかかる。

その超高速のコーナーリングスピードにおいては、ホイールベースが長い方が安定するのだ。

この年ターボパワーを失い、空力の重要性を再認識しながらコーナー重視のマシンを設計するにあたり、高速コーナーで高いレベルで安定するロングホイールベースのマシンに仕上げたのだと私は推測する。

ここから次第に長くなるF1マシンのホイールベース。

次のページでは、1990年代中盤から現在までのホイールベース延長の歴史を紹介します。

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モータースポーツ撮影歴18年。腕に覚えは全く無いが、知識だけは豊富なワタクシぴぴが、レース撮影について偉そうに解説します。




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ぴぴ
モータースポーツをこよなく愛す、セナプロ世代の四十代。 サーキット観戦デビューは、1996年フォーミュラニッポン第7戦の富士スピードウェイ。ど迫力のエキゾーストノートとタイヤの焼ける匂いを実感し、それまでテレビでしか観戦してこなかった事を悔やむ。以降、F1・WEC・スーパーGT・スーパーフォーミュラなどを富士スピードウェイ・鈴鹿サーキットを中心に多数観戦する。 一眼レフデビューは2001年頃、CANON EOS7(フィルム機)。腕に覚えは全くないが、年数だけはそこそこ長い。 【一眼レフ遍歴】 CANON EOS 7 → CANON EOS kiss N → CANON EOS 60D → CANON EOS 7D MarkⅡ → CANON EOS 5D MarkⅣ & SONY α7R Ⅲ 【所有カメラ】 CANON EOS 5D MarkⅣ SONY α7R Ⅲ SONYサイバーショット DSC-RX1R 【所有レンズ】 CANON EF100mm-400mm f/4.5-5.6L IS Ⅱ USM CANON EF70-200mm f/2.8L IS Ⅱ USM CANON EF24mm-70mm f/4L IS USM CANON EF50mm f/1.2L USM CANON EF85mm f/1.4L IS USM SONY FE24-105mm F4 G OSS