今回は、鈴鹿サーキットで行われたF1日本グランプリのポールポジションタイムの推移と、コースレコードをマークした2019年のタイムとの差をみていきたいと思います。
大きなコース変更が少ない鈴鹿サーキットのポールポジションタイムをみていくことで、年代毎のF1マシン性能やレギュレーションの変化がみられるのでは、と思います。
それでは年代毎のレギュレーションの変化とともに、鈴鹿サーキットのポールポジションタイムの変化をみていきましょう!
※ すぐに日本GPのポールポジション推移を見たい方は、下の見出しの『3.F1日本グランプリポールポジションタイム表(1987-2006・2009-2019)』をクリックしてください。
ザックリ見出し
コース改修と総延長の推移
それではまず、予選タイムに影響を及ぼす鈴鹿サーキットのコース改修についてみていきましょう。
鈴鹿サーキットは大きなコース改修はありませんでしたが、小変更はF1開催以降4回行われています。
1991年には、1989年のセナ選手とプロスト選手の接触事故を受けシケインの形状を変更しました。
その後2001年と2002年の2回に分けて、S字コーナーから逆バンク、ダンロップコーナーにかけてコースを内側にし、ランオフエリアの拡充を図りました。
2003年には、前年アラン・マクニッシュ選手の大事故を受けて130Rの形状を変更し、85Rと340Rの複合コーナーとなり、シケインの形状も緩やかに変更され現在に至ります。
年 | 総延長 | 改修内容 |
1987-1990 | 5.85943km | |
1991-2000 | 5.86403km | シケインのデザイン変更 |
2001 | 5.85913km | S字の一部を内側に変更 |
2002 | 5.821km | 逆バンクダンロップを内側に変更 |
2003- | 5.807km | 130Rの形状を変更 シケインのデザイン変更 |
レギュレーションの推移
次に鈴鹿サーキットのポールポジションタイムに大きく影響する、レギュレーションの推移を確認します。
車体レギュレーションの推移
鈴鹿サーキットのポールポジションタイムに大きく影響すると思われる、車体レギュレーションの大まかな変更についてです。
年 | 変更点 |
1988 | 最低重量+40kg ターボ過給圧2.5barに制限 |
1991 | フロントウイング-100mm 前後ウイング位置変更 |
1993 | 全幅150mm縮小 前後ウイング位置変更 |
1994 | ドライバーエイドのハイテク禁止 フロントウイング位置変更 ディフューザーサイズ縮小 リヤウイング面積低下 |
1995 | ステップドボトム規定 スキッドブロック装着 前後ウイング高変更 |
1996 | 最低重量600kg(ドライバー含む) |
1998 | 全幅-200mm(1800mm) |
2001 | フロントウイング位置変更 |
2004 | 最低重量605kg(予選時) |
2005 | 前後ウイング位置変更 |
2008 | トラクションコントロール禁止 |
2009 | フロントウイング位置変更 幅+400mm リヤウイング高+150mm 幅-250mm ディフューザー変更 マシンエアロパーツ大幅制限 |
2010 | 最低重量+15kg(620kg) |
2011 | DRS導入 最低重量+20kg(640kg) |
2014 | 最低重量691kg(ドライバー含む) フロントウイング幅-150mm(1650mm) |
2017 | 最低重量728kg(ドライバー含む) フロントウイング幅+150mm(1800mm) リヤウイング高800mm(低くなった数値不明) |
2018 | HALO導入で最低重量734kg(ドライバー含む) |
2019 | フロントウイング幅+200mm(2000mm) リヤウイング幅+100mm(1050mm) DRS開口部面積増大 |
エンジン(PU)レギュレーションの推移
エンジンの排気量や過給機の有無も鈴鹿サーキットのポールポジションタイムに大きく影響を与えます。
大まかなエンジン(PU)レギュレーションの推移は、1987年から1988年まで1500ccターボ、1989年から1994年まで3500ccNA、1995年から2005年まで3000ccNA、2006年から2013年まで2400ccNA、2014年から現在まで1600ccターボPUとなっています。
その他2009年KERS導入(2010年廃止後2011年復活)、2014年よりKERSに代わりERS導入。
年 | エンジン形式 |
1987-1988 | 1500cc ターボ |
1989-1994 | 3500cc NA |
1995-2005 | 3000cc NA |
2006-2013 | 2400cc NA |
2014- | 1600cc ターボ PU |
年 | エネルギー回収システム |
2009 | KERS導入 |
2010 | KERS廃止 |
2011 | KERS再導入 |
2014 | ERS導入 |
エンジンの使用制限も年々強化されて、予選でもエンジンの耐久性を考えた仕様になりました。
年 | 使用エンジン(PU) |
2003 | 予選から決勝1基 |
2004 | 1グランプリ1基 |
2005 | 2グランプリ1基 |
2009-2013 | 年間8基 |
2014-2016 | 年間5基 |
2017 | 年間4基 |
2018- | 年間3基 |
タイヤレギュレーションの推移
タイヤレギュレーションも予選タイムに大きく影響を及ぼします。
予選用Qタイヤは1991年をもって禁止、1998年には溝があるグルーブドタイヤを採用しました。
2009年にスリックタイヤが復活し、2017年には前後ともにタイヤが幅広になりました。
年 | 変更点 |
1992 | 予選用Qタイヤの禁止 リヤタイヤ幅3インチ縮小 |
1998 | グルーブドタイヤ採用(前輪3本溝・後輪4本溝) |
1999 | グルーブドタイヤ前輪3本溝→4本溝 |
2009 | スリックタイヤ復活 |
2010 | フロントタイヤ幅-25mm(245mm) |
2017 | フロント305mmリヤ405mmにワイド化 |
レギュレーションとは離れますが、F1へのタイヤサプライヤーは、グッドイヤー(1987-1998)、ピレリ(1989-1991・2011-)ブリヂストン(1997-2010)、ミシュラン(2001-2006)でした。
2001年から2006年のブリヂストンvs.ミシュランの争いで、F1のタイヤ性能が大幅に上がりましたね。
年 | タイヤサプライヤー |
1987-1988 | グッドイヤー |
1989-1991 | グッドイヤー vs. ピレリ |
1992-1996 | グッドイヤー |
1997-1998 | グッドイヤー vs. ブリヂストン |
1999-2000 | ブリヂストン |
2001-2006 | ブリヂストン vs. ミシュラン |
2007-2010 | ブリヂストン |
2011- | ピレリ |
予選方式の推移
予選方式も鈴鹿サーキットのポールタイムに影響します。
2002年までは金曜日1時間と土曜日1時間の合計2時間のセッションの中から最速ラップを採用していましたが、2003年から2005年は1台ずつ順番に走行するシングルカーアタックに変更。
そして現在のノックアウト方式は2006年から採用しました。
※ちなみに2016年に1台ずつノックアウトされていく変な予選方式がありましたが、第2戦を最後に廃止され鈴鹿サーキットでは行われていないので、ここでは割愛します。
年 | 予選方式 |
1987-2002 | 2日制 |
2003 | 2日制シングルカーアタック |
2004-2005 | 1日制シングルカーアタック |
2006- | ノックアウト方式 |
F1日本グランプリポールポジションタイム表(1987-2006・2009-2019)
1987年から鈴鹿サーキットで始まったF1日本グランプリ。
長い歴史のなかで、鈴鹿サーキットのポールポジションタイムはどのように変化していったのでしょうか。
ではそのラップタイムの推移を、年代別の表でみていきましょう。
ちなみにポールポジションタイムの下、カッコ内のプラス表示(+○.○○)は、コースレコードタイムをマークした2019年の予選ラップタイムとのギャップを表しています。
年 | PPタイム (※) | ドライバー (チーム) | 路面 |
1987 | 1’40.042 (+12.978) | G.ベルガー (フェラーリ) | ドライ |
1988 | 1’41.853 (+14.789) | A.セナ (マクラーレン) | ドライ |
1989 | 1’38.041 (+10.977) | A.セナ (マクラーレン) | ドライ |
1990 | 1’36.996 (+9.932) | A.セナ (マクラーレン) | ドライ |
1991 | 1’34.700 (+7.636) | G.ベルガー (マクラーレン) | ドライ |
1992 | 1’37.360 (+10.296) | N.マンセル (ウィリアムズ) | ドライ |
1993 | 1’37.154 (+10.090) | A.プロスト (ウィリアムズ) | ドライ |
1994 | 1’37.209 (+10.145) | M.シューマッハ (ベネトン) | ドライ |
1995 | 1’38.023 (+10.959) | M.シューマッハ (ベネトン) | ドライ |
1996 | 1’38.909 (+11.845) | J.ビルヌーブ (ウィリアムズ) | ドライ |
1997 | 1’36.071 (+9.007) | J.ビルヌーブ (ウィリアムズ) | ドライ |
1998 | 1’36.293 (+9.229) | M.シューマッハ (フェラーリ) | ドライ |
1999 | 1’37.470 (+10.406) | M.シューマッハ (フェラーリ) | ドライ |
2000 | 1’35.825 (+8.761) | M.シューマッハ (フェラーリ) | ドライ |
2001 | 1’32.484 (+5.420) | M.シューマッハ (フェラーリ) | ドライ |
2002 | 1’31.317 (+4.253) | M.シューマッハ (フェラーリ) | ドライ |
2003 | 1’33.237 (+6.173) | R.バリチェロ (フェラーリ) | ドライ |
2004 | 1’33.542 (+6.478) | M.シューマッハ (フェラーリ) | ドライ |
2005 | 1’46.106 (+19.042) | R.シューマッハ (トヨタ) | ウエット |
2006 | 1’29.599 (+2.535) | F.マッサ (フェラーリ) | ドライ |
2009 | 1’32.160 (+5.096) | S.ベッテル (レッドブル) | ドライ |
2010 | 1’30.785 (+3.721) | S.ベッテル (レッドブル) | ドライ |
2011 | 1’30.466 (+3.402) | S.ベッテル (レッドブル) | ドライ |
2012 | 1’30.839 (+3.775) | S.ベッテル (レッドブル) | ドライ |
2013 | 1’30.915 (+3.851) | M.ウェバー (レッドブル) | ドライ |
2014 | 1’32.506 (+5.442) | N.ロズベルグ (メルセデス) | ドライ |
2015 | 1’32.584 (+5.520) | N.ロズベルグ (メルセデス) | ドライ |
2016 | 1’30.647 (+3.583) | N.ロズベルグ (メルセデス) | ドライ |
2017 | 1’27.319 (+0.255) | L.ハミルトン (メルセデス) | ドライ |
2018 | 1’27.660 (+0.596) | L.ハミルトン (メルセデス) | ドライ |
2019 | 1’27.064 | S.ベッテル (フェラーリ) | ドライ |
※ PPタイム下のカッコ内は、2019年のコースレコードタイムに対するタイムギャップ
最後に
今回はF1日本グランプリが行われる、鈴鹿サーキットのポールポジションタイムの推移をみていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
技術の進化とともにマシンが速くなり、それをレギュレーションで規制してきましたが、2017年以降マシンが以前のように幅広になり、1000馬力を超えていると言われているパワーユニットの出力も相乗効果となり、F1日本グランプリが鈴鹿サーキットで始まった1987年に比べ13秒近く速くなっています。
2021年の大幅なレギュレーション改正とともに、さらにラップタイムが向上するのか、興味は尽きません。
以上、最後までご覧いただきありがとうございました。
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