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【特別編】ライフL190 全戦予備予選不通過!W12エンジン搭載のF1史に残る伝説の駄作マシン(ミニカー#116)

ライフL190というマシンを覚えていますか?

おそらくF1ブーム真っ只中の1990年にF1を観ていた方ならば覚えている方も多くいるでしょう。

そう、W型12気筒エンジンを搭載してこの年からF1に参戦したあの伝説の駄作マシンです。

予備予選(予選に出場するために金曜日の早朝に行われたタイムアタックの名称)を1度も通過しなかったばかりか、フジテレビのF1中継でもほぼ映されず、日本グランプリに来ることなく撤退したため、当時のF1ファンでも動いている姿を観たことのある方は皆無だったあのマシン。

でも、名前だけは有名でした。

あのマシンをじっくりと観てみたい・・・。

そんな望みをモデルガレージロムというミニカー専門店が叶えてくれました!

なんと、ロムがミニカーブランドとして有名なスパークに特別発注をして、この度発売してくれたのです!

ということで、今回はライフL190のミニカーをじっくり観ながらマシンの思い出を振り返ってみたいと思います。

もちろん同年のPQ(予備予選)戦士、ライバルのスバルコローニC3Bも登場しますよ。

では、いってみましょー!

まずはミニカー紹介

まずはライフL190のミニカーについて。

こちらが今回我が家にやってきたミニカーです。私は2023年12月に予約し、8ヶ月後の2024年8月に商品がやって来ました。

発売元はモデルガレージロムで、サイズは1/43になります。

台座に402/800と刻まれていることから、800台の限定生産商品で私のモデルはその402番目の生産ということでしょう。

同じく台座から1990年ハンガリーグランプリの予備予選(PQ)のマシンをモデル化したことがわかります。

なぜハンガリーグランプリかは・・・不明です。

今回のモデルはエンジンが付属しているのが特徴。

発注元のモデルガレージロムも絶対に付属したかったとホームページに綴っていました。

水平対向8気筒エンジンに直列4気筒を追加したというヘンテコなカタチのエンジンがよく再現されています。

ミニカーの製造は中国のスパーク。ミニチャンプスと並び称される1/43ミニカーの代表的ブランドの一つです。

細かいディティールに定評のあるスパークですが、たまーに全体のフォルムに違和感のあるモデルも。でも、ライフL190の正解は知らない人が多数派なので問題無し??

それよりも、こんな予備予選もまともに走らなかったマイナーマシンを発売しようと決めたモデルガレージロムさんと、映像や写真が極端に少ないこのライフL190を仕上げてくれたスパークさんに大感謝です。

W型12気筒を搭載するために立ち上げたライフ

ライフL190の最大の特徴は自社製W型12気筒エンジン(ライフF35)。

この特徴あるエンジンを設計したのが、名門フェラーリで1949年から1979年までエンジンデザイナーとして活躍したフランコ・ロッキでした。

ロッキはフェラーリ在籍時の1967年からしばらく、498ccの実験用W型3気筒エンジンとこのエンジンを6基結合したW型18気筒エンジンのデザインに携わっていました。

ちなみにW型は、クランクシャフトを短く出来てエンジン全長が短縮できることがメリットですが、横幅が広くなりさらに重量が重くなり、何より複雑なのがデメリットになります。

結局W型の開発が上手くいかず、尚且つ1972年に最大気筒数が12までと定められたため、開発が中止されました。

ただ、ロッキはこのW型エンジンの開発を個人的に継続しており、1989年からのターボ禁止がチャンスだと思い、チームを立ち上げたとのこと。

W型エンジンを走らせたいためにF1チームを立ち上げるなんて、ロッキさん情熱ありすぎです。

ライフL190はピットガレージに居る姿がよく似合う!

では、ライフL190の現役時代を再現しながら写真を撮ってみましょう。

まずはピットガレージに佇むライフL190を再現してみました。

色味が似ているため、スーパーGTに参戦するニスモのガレージを拝借しましたが、実際にはニスモよりも明らかに少ない予算だったでしょうから、ガレージにこんなスポンサーロゴの入ったパーテーションなんて無かったでしょうね。

そんなガレージのライフL190をアップにしてみましたが、正面から見るとエンジンカウルの盛り上がりがヤバイ!

もちろん、これは異常に横幅のあるW型12気筒エンジンを搭載するためにこんな形状をしています。

そしてヘルメット上のインダクションポッドとは別に肩のサイドにも大きなエアインテイクがありますが、発熱の問題も抱えていたのでしょう。

そういえば、序盤戦はエンジン剥き出しで走行していたこともありましたね。

リヤビューはこんな感じ。

リヤディフューザーで強烈なダウンフォースを生み出すのがレーシングマシンですが、なんともシンプルな形状。

実はこのマシン、ファーストレーシングなるチームが1989年のF1に参戦するために、国際F3000のマーチ88Bをベースに開発したマシン。

しかしファーストレーシングは参戦が叶わず、ライフレーシングエンジニアリングが購入して、W12エンジンを搭載するためにエンジンカウルを加工し、L190として日の目を見ることになりました。

さあ、珍しくW12エンジンが掛かったのでしょうか? ピットガレージから出て来て、コースイン直前の姿を再現しました。

イタリアンレッドのカウルにほぼホワイトで統一された少ないスポンサーロゴにAgipのマーク。そして前後のウイングはカーボン剥き出し・・・ロッキの古巣フェラーリを彷彿とさせますね。

第3戦サンマリノグランプリからエンジンカウルに大きく描かれた『pic』とその下にソビエト連邦の国旗。『pic』とは、ソ連軍と密接な関係を持っていた会社らしい。

ん? ソ連崩壊はこの翌年?? なんかヤバそう・・・。

エンジンカウル後方の黒い棒状の物は、W型エンジンの中央4気筒分の排気管。水平対向8気筒エンジンの上に直列4気筒エンジンを右に傾けながら乗っていて、排気は左側から出しているため、カウルの左側に排気管があるのです。まったくもって変なカタチだね。

ドライバーは1977年から1983年までマクラーレン、アルファロメオ、トールマンで活躍したブルーノ・ジャコメリ(開幕2戦はゲイリー・ブラバム)。

アルファロメオ時代はポールポジションや表彰台も獲得した実力あるドライバーでしたが、まあ、このマシンじゃ誰が乗っても同じでしょ!?

気になったのがヘルメットと二の腕のマールボロロゴ。ミニカーでもタバコ広告が規制されて久しいのですが、このモデルではしっかりと再現されていて嬉しい限りです。

そしてヘルメットバイザーとレーシングスーツの胸に、レイトンハウスのロゴが入っていました。

F1ブームやバブルの代名詞と謳われるレイトンハウスですが、最盛期にはジャコメリのサポートもしていたとはちょっと驚きです。

ライフL190がスバルコローニC3Bとともにグリッドに並んだ!?

当時のF1は予選に出走できるマシンが30台までだったため、下位チームは予選に出場するために予備予選を通過する必要がありました。

予備予選は金曜日の通常8時から9時の1時間で、1990年は概ね9台が出場し上位4台が予選に進出できました。

まともにエンジンが始動しないライフはもちろん全戦予備予選不通過で、金曜早朝の1時間のみで終了。決勝はおろか予選にも出場することなく撤退しました。

せめてミニカーの中だけでもF1のグリッドに着かせてあげようと思いまして・・・

どうです? この違和感・・・。

ジャコメリさんも1983年以来のグリッドということで、気合が入り前のめりに見えなくもない!?

そしてフロントローに並ぶのがスバルコローニC3B。こちらも初グリッドです。

はい、ここから2台のPQ(予備予選)戦士の共演が始まります。

遠くからマシンを眺めるとフェラーリに見えなくもない!?

いや、それはカラーリングだけ。

当時のフェラーリ641/2の長く流麗なサイドポッドと、流れるようなインダクションポッドからのエンジンカウルデザインとは雲泥の差ですね。

まあ、天才ジョン・バーナードが設計した640系と国際F3000マシンがベースのL190。比べちゃーいけません。

ライフL190は前述した通り元はファーストレーシングで、V型8気筒のジャッドCVエンジンを搭載する予定でした。

しかし重量が圧倒的に重すぎるW型12気筒のライフF35エンジンを搭載することになったため、マシンは重量に耐えきれず常に底打ちする状態だったといいます。

エンジンもダメならばシャシーもお粗末。いやー、とんでもないマシンでした。

実はライフL190にはタコメーターが無かったらしい!

当時のF1マシンはフェラーリを除いてすべてHパターンの完全マニュアルミッション。エンジン回転数を合わせてシフトチェンジをしなければならないのに、回転計が無いなんてありえない!

F1ドライバーならばエンジン音を聴いてシフトチェンジしろって? いや、独自の音を発するW型エンジンの経験などどのF1ドライバーも無いだろ・・・。

そんなライフL190の実力はどの程度なのか・・・。

開幕戦アメリカグランプリでの予備予選タイムは2分07秒147。これは同じく予備予選組のユーロブルンから約30秒落ちで、ポールポジションを獲得したマクラーレンからは40秒も遅いタイムでした。

決勝に進出したとしても3周目でラップダウンという脅威の遅さ!

F3マシンよりも遅い・・・。

でも開幕戦では走っただけでもマシ。

続くブラジルグランプリの予備予選セッションでは、ピットロードでエンジンがブローしてマシンストップ。原因はエンジンオイル未給油・・・。

実は給料が支給されず激怒したメカニックが、わざとエンジンオイルを入れずにマシンをコースインさせたのでした。

いやー、シャシーもエンジンもダメならば、メカニックもダメダメです。

結局、予備予選落ちを繰り返したライフは第12戦イタリアグランプリを最後にW型12気筒のF35を諦めてジャッドV8に換装。

しかし事態は変わらず、第15戦日本グランプリと第16戦オーストラリアグランプリへの旅費が捻出できずに欠場し、そのままF1撤退となりました。

実際には叶わなかった予備予選と予選を通過し、決勝に進出したという設定でライフL190をグリッドに並べてみましたが・・・やっぱりこの日もエンジントラブルにより1周目でガレージイン。

やっぱりライフL190はピットガレージが好きなのでした・・・。

最後にライフL190とスバルコローニC3Bの2台のPQ戦士で記念写真。

ノーズやウイングもかなり違いますが、一番違うのがリヤカウルの造形。やっぱりエンジンの形状によりマシンのフォルムは違ってくるのですね。

1970年代はフェラーリが水平対向エンジン(正確にはバンク角180度のV型)を、1980年代はBMWやザクスピードが直列エンジンを搭載していました。

そして1990年にスバル(正確にはモトーリモデルニ)が本物の水平対向エンジンで参戦すると、ライフはF1初のW型エンジンを投入しましたが、結果は両マシンともに全戦予備予選落ちで、その後F1エンジンはすべてV型だけとなりました。

1990年のF1は牧歌的な雰囲気が残る年で、私たちファンもそんな野心的な挑戦を楽しんでいた最後の時代でした。

最後に

ということで今回はF1史に残る伝説の駄作マシンとの呼声高い、ライフレーシングエンジニアリングのライフL190のミニカーを撮影し、マシンとチームのエピソードを書いてみました。

2万円を超える高額ミニカーですが、写真がほとんど残っていない伝説の珍車をじっくりと堪能できるため、私を含めたF1ブーム世代の一部のマニアにとっては破格の安さだと思います。

こんな売れるかどうかもわからないヘンテコマシンを発売してくれたモデルガレージロムさんと、資料がほとんどないマシンを再現してくれたスパークさんにあらためて感謝。本当にありがとうございます。

興味のある一部のマニアさんに向けて、スパーク製ライフL190のAmazonリンクを貼っておきます。

Amazonリンク→https://amzn.to/3LYTrvb

この記事を書いている2024年8月12日現在はまだ在庫があるようですが、800台の限定商品のため早期注文が必至です。

ということで、今回は大好きなマシンでエピソードも尽きないのでちょっと書き過ぎてしまいましたが、この辺で以上とします。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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大福
モータースポーツをこよなく愛す、セナプロ世代の四十代。 サーキット観戦デビューは、1996年フォーミュラニッポン第7戦の富士スピードウェイ。ど迫力のエキゾーストノートとタイヤの焼ける匂いを実感し、それまでテレビでしか観戦してこなかった事を悔やむ。以降、F1・WEC・スーパーGT・スーパーフォーミュラなどを富士スピードウェイ・鈴鹿サーキットを中心に多数観戦する。