F1チームのマシン名の付け方はチームにより異なりますが、多くは自チームや前のチームからの続き番号や西暦という法則があります。
- メルセデス・・・W+復帰後の続き番号+ハイブリッドを表す名前など
- レッドブル・・・RB+1から始まった続き番号
- マクラーレン・・・プロジェクト4と合併後の続き番号で、頭のアルファベットのみ途中MP4からMCLに変更
- アルピーヌ・・・A5+西暦の下二桁
- レーシングブルズ・・・VCARB+続き番号
- アストンマーティン・・・AMR+西暦の下二桁
- ザウバー・・・C+続き番号(F1以外含む)
- ハース・・・VF-+西暦の下二桁
- ウィリアムズ・・・FW+続き番号(FW39は無し)
しかしフェラーリのみ、もう、めちゃくちゃ・・・。命名法に一貫性がまったくと言っていいほど無いんです。
そこで今回は、1950年から現在に至るまで、すべてのフェラーリF1マシンの名前の由来をご紹介したいと思います。
それでは行ってみましょう!
ザックリ見出し
1950年代は1気筒あたりの排気量から

| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 1950 | 125F1 | 1気筒あたりの排気量125ccのF1マシン |
| 1950 | 275F1 | 1気筒あたりの排気量275ccのF1マシン |
| 1950 | 375F1 | 1気筒あたりの排気量375ccのF1マシン |
| 1952 | 500F2 | 1気筒あたりの排気量500ccのF2マシン |
| 1953 | 553F1 | 500F2の1953年バージョンのF1マシン |
| 1954 | 625F1 | 1気筒あたりの排気量625ccのF1マシン |
| 1955 | 555F1 | 500F2の1955年バージョンのF1マシン |
| 1957 | 801F1 | F1の8気筒F1マシン(ランチアから譲渡されたD50の改修型) |
| 1958 | 246F1 | 2400ccの6気筒のF1マシン |
1950年代の多くのフェラーリマシンは、1気筒あたりの排気量から決めていました。
気になるのは1952年の500F2・・・なぜ、F1なのにF2って入っているの??
実は1952年のF1はF2マシン規定で行われたため、500F2なのです。
1957年の801F1はフェラーリの歴史上異色のマシンとして有名。
もともと801F1はランチアD50でした・・・へっ??
1954年の最終戦にランチアがD50を投入しましたが、翌1955年の第2戦モナコグランプリ以降資金難でランチアがF1を撤退。6台のランチアD50がフェラーリに譲渡されました。
フェラーリにより改修されたランチアフェラーリD50として1956年シーズンに投入。1957年にさらに改修されたのが801F1でした。
1958年の246F1では、初めて排気量+気筒数のネーミングを採用します。
1960年代は排気量に気筒数

| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 1961 | 156F1 | 1500ccの6気筒のF1マシン |
| 1964 | 158F1 | 1500ccの8気筒のF1マシン |
| 1966 | 312 | 3000ccの12気筒マシン |
1960年代は、1958年型246F1から続く、排気量+気筒数の法則が踏襲されます。
それまですべてのF1マシン名には『F1(F2)』が入っていましたが、文字が消えたのが1966年の312でした。
1970年代は排気量に気筒数+メカニカルな特徴

2017年FUJI WONDERLAND FES!にて
| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 1970 | 312B | 3000ccの12気筒ボクサー(Boxer)エンジン 正確に表現するとこのエンジンはボクサーエンジンではないのだが・・・ |
| 1971 | 312B2 | 3000ccの12気筒ボクサー(Boxer)エンジン2代目 |
| 1973 | 312B3 | 3000ccの12気筒ボクサー(Boxer)エンジン3代目 |
| 1975 | 312T | 3000ccの12気筒横置き(Trasversale)ギアボックス |
| 1976 | 312T2 | 3000ccの12気筒横置き(Trasversale)ギアボックス2代目 |
| 1978 | 312T3 | 3000ccの12気筒横置き(Trasversale)ギアボックス3代目 |
| 1979 | 312T4 | 3000ccの12気筒横置き(Trasversale)ギアボックス4代目 |
1970年代も排気量に気筒数の法則が踏襲され、その後にメカニカルな特徴であるBやTを入れました。
1979年の312T4は前年の312T3とマシンコンセプトが大きく異なっていましたが、大成功した312Tの名前を引き続き使用します。
その後もフェラーリは黄金期にはマシン名の法則を継続し、低迷すると法則を変更する癖があります。ゲン担ぎ?
1980年代前半はバンク角に気筒数+メカニカルな特徴 しかし突如異変が・・・

2018年F1日本GPにて
| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 1980 | 312T5 | 3000ccの12気筒横置き(Trasversale)ギアボックス5代目 |
| 1981 | 126CK | バンク角120度の6気筒 過給機(Compressore※)がKKK社製 ※Cの意味は推測 |
| 1982 | 126C2 | バンク角120度の6気筒 過給機(Compressore)の2代目 |
| 1983 | 126C3 | バンク角120度の6気筒 過給機(Compressore)の3代目 |
| 1984 | 126C4 | バンク角120度の6気筒 過給機(Compressore)の4代目 |
| 1985 | 156/85 | 1500ccの6気筒の1985年マシン |
| 1986 | F186 | F1の1986年マシン |
| 1987 | F187 | F1の1987年マシン |
| 1988 | F187/88C | F187の1988年型で過給圧(Compresso)ルールに適合させたマシン※ |
| 1989 | 640 (F189) | 640は開発コードナンバー640 別称のF189はF1の1989年マシン |
1980年代前半はバンク角を取り入れ、バンク角+気筒数+過給機になり、その126シリーズは4代にわたり使用されます。
そして1986年、マシンが完全に新設計になったのを機に、初めて西暦を取り入れました。
それまで多くのF1チームと違いちょっと捻りのきいたマシン名だったのに、一般的な名称になってしまい、ちょっと残念!?
1989年はF189という名前はあったものの、一般には開発コードナンバーの『640』で呼ばれ1990年代に続きます。
1990年代前半は開発コード その後2年毎に法則変更!

| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 1990 | 641 (F190) | 641は開発コードナンバー641 別称のF190はF1の1990年マシン |
| 1991 | 642 (F191) | 642は開発コードナンバー642 別称のF191はF1の1991年マシン |
| 1991 | 643 | 開発コードナンバー643 |
| 1992 | F92A | Ferrariの1992年マシンAスペック |
| 1992 | F92AT | Ferrariの1992年マシンAスペックの横置き(Trasversale)ギアボックス |
| 1993 | F93A | Ferrariの1993年マシンAスペック |
| 1994 | 412T1 | 1気筒あたり4バルブの12気筒エンジンの横置き(Trasversale)ギアボックスの1代目 |
| 1994 | 412T1B | 1気筒あたり4バルブの12気筒エンジンの横置き(Trasversale)ギアボックスの1代目のBスペック |
| 1995 | 412T2 | 1気筒あたり4バルブの12気筒エンジンの横置き(Trasversale)ギアボックスの2代目 |
| 1996 | F310 | Ferrariの3000ccの10気筒エンジン |
| 1997 | F310B | Ferrariの3000ccの10気筒エンジンBスペック |
| 1998 | F300 | Ferrariの3000ccの10気筒エンジンのエンツォ・フェラーリ生誕100周年 |
| 1999 | F399 | Ferrariの3000ccの1999年マシン |
1990年代前半は1989年からの開発コードナンバーを踏襲します。
ちなみに開発コードナンバーは現在も続いていて、2025年型SF-25の開発コードナンバーは677です。SF-25を677って呼んだらちょっと通っぽい??
1992年からは法則が変更するも、F92A/F93Aシリーズ、412T1/412T2シリーズともに2年で終了。イタリア人は飽き性なんでしょうか・・・。
F92A/F93Aシリーズなんて、Bスペックを出す予定で『A』と命名したのに、素性が悪すぎてBを出さずに開発終了する有様でした。
私としては、1994年からの412Tシリーズが、1970年代の強かったフェラーリの名前を踏襲していて(狙ってつけたのでしょうが)好きでしたが、2年で終わってしまったのが残念でした。
2000年代は西暦を採用

2018年F1日本GPにて
| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 2000 | F1-2000 | F1の2000年マシン |
| 2001 | F2001 | Ferrariの2001年マシン |
| 2002 | F2001B | Ferrariの2001年マシンのBスペック |
| 2002 | F2002 | Ferrariの2002年マシン |
| 2003 | F2002B | Ferrariの2002年マシンのBスペック |
| 2003 | F2003-GA | Ferrariの2003年マシン Giovanni Agnelli |
| 2004 | F2004 | Ferrariの2004年マシン |
| 2005 | F2004M | Ferrariの2004年マシンの改良型(Modificato) |
| 2005 | F2005 | Ferrariの2005年マシン |
| 2006 | 248F1 | 2400cc 8気筒エンジンのF1マシン |
| 2007 | F2007 | Ferrariの2007年マシン |
| 2008 | F2008 | Ferrariの2008年マシン |
| 2009 | F60 | F1参戦開始から60周年 |
フェラーリ最大の黄金期は2000年からは西暦をそのまま取り入れてネーミングします。
しかしF2005でドライバーズタイトル6連覇を逃すと、1年だけ1960年前後のネーミングにしますが、翌年からまた西暦に戻します。調子が悪くなると名前を変える癖がまた出ましたね。
F+西暦の法則は、黄金期を支えた立役者のひとり、ジャン・トッドが退任した2008年で終了。黄金期終焉とともに、翌年からは法則が完全崩壊するのでした・・・。
F2001やF2002などの頭の”F”はFerrariの”F”か、それともF1の”F”なのか。
フェラーリの新車発表でも発言されず、様々な資料も調べてみましましたが答えが出ませんでした。
そこでX(アンケート時はTwitter)でアンケートをとったところ、多くのファンがFerrariの”F”だと答えてくれました。
そこで当ブログでは、2000年代の『F+西暦』の”F”はFerrariの”F”とします。
2010年代は法則崩壊!

2019年F1日本GPにて
| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 2010 | F10 | F1用2010年マシン |
| 2011 | 150°イタリア | イタリア統一150周年(周年=th=°) |
| 2012 | F2012 | Ferrariの2012年マシン |
| 2013 | F138 | Ferrariの2013年型8気筒エンジン |
| 2014 | F14 T | Ferrariの2014年型Turboエンジン |
| 2015 | SF15-T | Scuderia Ferrariの2015年型Turboエンジン |
| 2016 | SF16-H | Scuderia Ferrariの2016年型Hybrid PU |
| 2017 | SF70H | Scuderia Ferrariのモータースポーツ参戦70周年のHybrid PU |
| 2018 | SF71H | Scuderia Ferrariのモータースポーツ参戦71年のHybrid PU |
| 2019 | SF90 | Scuderia Ferrariのチーム創設90周年 |
2010年代に入ると法則が完全に崩壊します。
2011年の150°イタリアはイタリア統一150周年からなんてフェラーリ関係ないし、2012年に西暦に戻ったかと思えば1年でやめちゃうし、2017年のSF70Hや2019年のSF90はタイトル獲得出来ず祝えないから自ら祝ってます!
あと気になるのが2018年。SF71Hはモータースポーツ参戦71年って、記念でもなんでもないじゃん!
2014年はマシン名を公募したんですよね。もはやマシン名にこだわりやプライドも捨ててしまったフェラーリなのでした・・・。
2020年代は記念年以外はチーム名+西暦

2023年F1日本GPにて
| 登場年 | マシン名 | マシン名の由来 |
|---|---|---|
| 2020 | SF1000 | Scuderia FerrariがF1参戦1000戦目を迎えることから |
| 2021 | SF21 | Scuderia Ferrariの2021年のマシン |
| 2022 | F1-75 | 量産車が出荷されてから75周年を祝うF1マシン |
| 2023 | SF-23 | Scuderia Ferrariの2023年マシン |
| 2024 | SF-24 | Scuderia Ferrariの2024年マシン |
| 2025 | SF-25 | Scuderia Ferrariの2025年マシン |
2020年代初のマシンであるSF1000の由来は、フェラーリがF1参戦1000戦目を迎えるという自身を祝うネーミング。おめでたいチームですねぇ・・・。
翌2021年にチーム名+西暦二桁のシンプルなパターンになりますが、また2022年に催事毎。いや、量産車出荷75周年って大してめでたくないだろ!?
そして2023年からはチーム名-西暦二桁のシンプルパターンになり、珍しく3年が経過していますが、そろそろ飽きそう・・・。
最後に

フェラーリのマシン名は、1950年代が1気筒あたりの排気量、1960年代から1970年代は総排気量に気筒数を含めていましたが1990年代頃からチームの不調とともにマシン名も迷走します。
2000年代の黄金期は西暦を取り入れ他ネーミングで安定しますが、またも不調の2010年代には催事ごとや公募でネーミングし、法則は完全に崩壊してしまいました。
2023年以降はチーム名+西暦下二桁で安定していますが、不調のためそろそろ記念に走りそうな予感。
2026年は電気出力が増大するから、電気のイタリア語=ElettricitàのEを入れて、SF-26Eと予想します。
そして2027年はモータースポーツ参戦80周年でSF80Eかな??
不調とともにマシン名の法則が迷走するスクーデリアフェラーリ。今後も一貫性のないマシン名を大いに楽しむことにしましょう!
以上、最後までご覧いただきましてありがとうございました。











