私はいにしえのレーシングマシンを堪能できるモータースポーツミュージアムが大好き。
目の前にあるこのマシンが、表彰台に上がったあのグランプリを、あの名レースを走った実車なんだ、と思いながら、穴の開くほど細部を観て、撮影するのが至福の時間なのです。
思えば過去にホンダコレクションホールやホンダレーシングギャラリー、ヤマハコミュニケーションプラザなど、国内の多くのモータースポーツミュージアムを訪問して、このブログで紹介してきました。
そういえば、若い頃にレーシングパレスも。懐かしいでしょ??
そんなことで、常設のモータースポーツミュージアムはそろそろ行き尽くしました。
ということで、2ラップ目に突入。
大型のミュージアムでは展示マシンが入れ替わるので、ふたたび訪れて、新たなマシンを観に行きます。
再訪問の第一弾は富士スピードウェイに隣接する富士モータースポーツミュージアム。
2023年以来2年ぶりの訪問で、新たなマシンの展示も多く加わり、前回出張中だった念願のトヨタF1に会うこともできましたので、今回はそのF1マシンを紹介します。
この記事に登場するドライバー名の敬称は省略させていただきます。
ザックリ見出し
トヨタF1最後のマシンTF109(実戦仕様)

レーシングマシンの中でも特にF1の展示車両を観るのが好きなのですが、2年前にここを訪れた時にはトヨタF1が出張中で大ショックでした。でも今回は一番奥にしっかりと鎮座していました。
フォーミュラ嫌いで有名な豊田章男会長に忖度してか、富士モータースポーツミュージアム最大の特等席にはプロトタイプマシンが展示されて、トヨタF1はその横の露払い的な場所ですが、トヨタの貴重なF1マシンを観られるのは嬉しい限り。
展示のマシンはトヨタTF109。
トヨタは2002年から2009年までの8年間F1に参戦しましたが、TF109といえば2009年型マシンで、車両横の説明では小林可夢偉がグランプリで使用した実車と書かれていました。
小林可夢偉がトヨタに所属したのは最後の2戦。この年の王者であるジェンソン・バトンとバトルを繰り広げた、最終年最終仕様の貴重なマシン。
ちょうどガイドツアーが行われているため、F1マシンの周りには観覧者がいないので、じっくり堪能させていただきます。
霜降り和牛カラー

トヨタF1といえば、デビューマシンのTF102から一貫して白地に赤のペイントが無造作に入るカラーリングが特徴で、この最後のマシンも同じく白地に赤色の特徴的なカラーリングです。


その元祖といえば、1998年のル・マン24時間に参戦したトヨタGT-One TS020。
トヨタのル・マン参戦40周年を記念して2025年のル・マン24時間で、トヨタGR010 HYBRIDをこのリバイバルカラーにして出走しました。
トヨタとしてもこのカラーリングにかなりの思い入れがあるのかもしれませんね。
尚、チーム代表の小林可夢偉は、このカラーリングを霜降り和牛カラーと称しています。さすが関西人。まさにピッタリの名称ですね。
レギュレーション大変革 この時代のF1マシンは国内でも貴重!

さて、ではマシンの形状をじっくりと観ていくことにしましょう。
特徴的な高ーいノーズ。

そのノーズに吊り下げられたフロントウイングは、チリトリと比喩された超幅広タイプ。

リヤウイングの幅は対照的に超狭い。

そしてダンボウイングやエレファントイヤーなど、2000年代に多くマシンに装着された細かな空力パーツが一切なく、ボディはツルッとしています。
そう、2009年シーズンはマシンレギュレーションが大幅に変更された年。
ホンダは前年を最後に第3期F1活動を終了しているため、国内でこの年のF1マシンを観られるのは超貴重なのです。
この年最大の注目ポイント ダブルディフューザーを間近で堪能!
前述した通り、この年はマシンレギュレーションが大きく変わった年で、フルモデルチェンジが大当たりしたブラウンGP(前年までホンダ)がチャンピオンを獲得しました。
そのブラウンGPの速さがダブルディフューザー。この年からリヤディフューザーは、幅1000mm高さ175mm、長さ350mmに規制されましたが、リヤアクスルよりも前に開口部を儲けてはならないという条項が抜け落ちていたため、ブラウンGPを含む一部のチームがそれを発見。この部分に開口部を設け、本来のディフューザーの上から気流を引き抜きアドバンテージを得ました。
そんなダブルディフューザーを装着したのはブラウンGPだけではなく、ウィリアムズとこのトヨタも。

そんなトヨタTF109のダブルディフューザーがこちら。大きな開口部が確認できますね。
現役当時は一番のデリケートゾーンでしたが、それをじっくりと独り占めできるなんて・・・最高でした!
ピストン位置が低すぎる!

サイドポッドの上にある黒い部分は排気管。
今のマシンは最後端から排気管を出していますが、当時のマシンは上方排気を採用して、その熱風をリヤウイングに当てて、ダウンフォースを稼いでいました。
で、その手前に見えるものはというと、これは搭載されるV型8気筒エンジンのピストン。
この年から18000回転に規制されたF1エンジンですが、それでもフリクションを抑えるためにこんなにも薄く造られていたのかと驚きます。
そしてピストンの高さは実際の搭載位置に合わせているとのこと。こんなにも低い位置に搭載されていたとは驚きですね。
前述した通り、豊田章男会長はフォーミュラ嫌いを公称していますが、あれだけモータースポーツを愛する氏は、絶対にF1が好きなはず。社長就任直後のリーマンショックの影響で、株主への忖度のためにF1を撤退したため、フォーミュラ嫌いと言わざる負えないのだと思っています。
そんなトヨタは近年F1チームのハースと技術契約をして、少しずつF1への関わりが深くなっています。
近い将来、トヨタがふたたびF1に参戦し、このミュージアムでトヨタの最新F1マシンが展示されることを願います。
ホンダF1はRA272(レプリカ)からRA273(実車)に

日本のモータースポーツ史にとってホンダの功績は計り知れず、トヨタ資本の富士モータースポーツミュージアムですが、ホンダの特別展示があり、世界GPのオートバイとともにホンダ第1期F1活動のマシンが展示されています。
2年前にこの場所に展示されていたのは、日本製F1マシンとして初めてF1で優勝した、ホンダRA272のレプリカでしたが、今回はRA273に変更されていました。
このRA273はグランプリを走った実車。
ホンダコレクションホールやホンダレーシングギャラリーまで行かずに、我が静岡県で歴史的マシンの実車を観られることに感謝です。
V12は一般的な縦置きに

現在のF1マシンは前後のウイングでマシンを押し付けていますが、当時はまだウイングを装着するという概念はなく、いわゆる葉巻型。

ということで、当時は空力が重要視されておらずエンジンがむき出し。このメカメカしさが個人的には超好みです。
前年までのRA272は、オートバイの技術をフィードバックして、V型12気筒を横置きに搭載していましたが、この1966年から排気量が倍増(1.5L→3.0L)したため、さすがに横には置けず、一般的な縦置きに変更されました。
ホンダミュージックと呼ばれる高回転で甲高い音色が特徴の当時のホンダエンジンでしたが、デカくて重いのが難点。

それはシャシーも同様で、4輪市販車を販売し始めたばかりのホンダには技術が乏しく、レーシングマシンを軽量化する術を持っていませんでした。実車を観ても明かに重量がありそうです。
そこでホンダはイギリスのレーシングカーコンストラクターであるローラカーズと共同で、新たなマシン、RA300を開発するのですが、それが現在ホンダレーシングギャラリーで観ることが出来ます。

どうです? 全然違うでしょ??
2つのモータースポーツミュージアムをハシゴして2台の違いを堪能するのも楽しいので、興味のある方はぜひ!
ということで、今回は富士モータースポーツミュージアムを訪れ、トヨタTF109とホンダRA273という2台のF1マシンをじっくりと観て観ました。
もちろんミュージアムには他にも多くのマシンが展示されているので、次回はル・マンとスーパーGTのマシンを特集します。
興味のある方は次回もぜひご覧ください。
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