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日産ヘリテージコレクション観覧記④ワンオフの特別車両とレース用スカイライン/GT-R編

今回も日産ヘリテージコレクションの観覧記になります。

スーパーGT/全日本GT選手権マシン、プロトタイプマシンと紹介してきましたが、それ以外にも膨大な台数が保管展示されているヘリテージコレクション。

その中から、最終回となる今回は、世界にたった1台のみの超貴重なワンオフ車両2台と、歴代スカイライン/GT-Rのレース車両を紹介します。

R390 GT1 1998年ル・マン24時間認証用ロードカー

こちらは、日産がル・マン24時間にエントリーするために認証用として製造された、R390GT1のロードカーになります。

当時のル・マンは最低1台は公道用市販車を製造しなければならず、日産は1997年のル・マン24時間参戦のためにロードカーを製造し、1998年用に改造されたのが写真の車両です。

当時は厳しい財務状況だった日産でしたが、内装までしっかりと作り込まれていたのが印象的でした。

左から1998年仕様、1997年仕様、そしてロードカー。

レースカーとロードカーの違いはかなり少ないのですが、ロードカーのヘッドライトはZ32型フェアレディZの物を流用。

そしてテールランプはクーペフィアットの物を流用したらしいです。

左はロードカー、右が1998年仕様のレースカーですが、比べてみると実に酷似しているのがわかります。

そんなR390GT1のロードカーは100万ドル(アメリカドル)の値を付ける予定でしたが、結局、販売されることはありませんでした。

MID4 Ⅱ型(1987年)

こちらはMID4 Ⅱ型という、エンジンを縦置きミッドシップに搭載したプロトタイプ車両。

Ⅱ型ということで当然Ⅰ型も存在し、初代は1985年のフランクフルトモーターショーで展示されて、大きな注目を浴びたそうです。

日産は当初市販の予定は無かったのですが、反響の大きさから市販化が検討され、発展型のMID4 Ⅱ型を1987年の東京モーターショーで公開。それがこちらの車両です。

もう、40年近く前の車両ですが、実際に見てみると非常にまとまり感がある、洗練されたデザインのスポーツカーでした。

そんなMID4 Ⅱ型、日産の財務状況の悪化や、採算面での問題がクリアできず、市販化を断念することに。

当時はまだホンダのNSXが世に出る前。発売されていれば日本車初のスーパースポーツとして、日産に対するイメージも大きく変化したはずで、市販化断念が悔やまれます。

スカイラインGT(1964年)

ここからはスカイラインとGT-Rのレース車両を時系列で見ていきましょう。

こちらは1964年の第2回日本グランプリのGT-Ⅱレースに参戦した、プリンス自動車の2代目スカイラインGT(S5型)。

49連勝を記録した通称ハコスカGT-Rは3代目なので、その前のモデルがこちらの車両ですが、こちら2代目も日本グランプリGT-Ⅱレースで2位から6位までを独占(優勝はポルシェ904)するなど、非常に素性の良い車両だったことが伺えます。

スカイライン2000GT-R(JAF GP優勝車 1969年)

そしてこちらが、ハコスカと呼ばれた3代目スカイラインの派生グレードとして登場したGT-Rをベースにしたレース車両で、初陣となる1969年のJAFグランプリで優勝したマシンになります。

この勝利こそが、その後49連勝を含む52勝を上げたハコスカGT-Rの最初の勝利でした。

実は初勝利の時は、結構ギリギリだったと説明に書かれていました。

スカイライン2000GT-Rレーシングコンセプト(1972年)

こちらは4代目スカイラインのGT-Rレーシングコンセプトモデル。

わずか2年10ヶ月で52勝を上げたハコスカの次期モデルとして注目を浴びた4代目は、1972年の東京モーターショーにてこのレーシングコンセプトを発表し、1973年からのシーズンに投入する予定でした。

しかし、自動車業界が抱える排気浄化や燃費向上の中、日産はワークス活動を休止し、4代目は実践投入がされることはなく、幻のGT-Rと呼ばれることになります。

写真のモデルは2007年にフルレストアを受けて、同年のニスモフェスティバルでお披露目された車両だそうです。

スカイラインスーパーシルエットグループ5(1982年)

こちらは、ニューマンスカイラインと呼ばれた6代目スカイラインをベースに製造された、スーパーシルエットのマシンで、ステアリングを握った長谷見昌弘が1982年シリーズに2勝し、翌年には4勝をマークしました。

近年はニスモフェスティバルなどで頻繁に走行する個体。

個人的にはスーパーシルエット車両は世代ではありませんが、2016年の鈴鹿サウンドオブエンジンで、アフターファイアーをぶっ放しながら力強く走行したシーンを思い起こします。

スカイラインGT-RグループAカルソニック(JTC 1990年)

そして、こちらが8代目スカイラインで久々に復活したGT-RをベースにしたグループA車両です。

1990年の全日本ツーリングカー選手権(JTC)にデビューしたR32 GT-Rは、終了する1993年までの4年間全29戦にすべて優勝(さらに全戦ポールポジションも)するという前人未到の大記録を達成しました。

写真のマシンは、星野一義と鈴木利男のドライブにより1990年シーズンのチャンピオンになったカルソニックスカイライン。

ニスモフェスティバルを初めとした多くのイベントでデモ走行をする個体ですね。

ZEXELスカラインGT-R(スパ24時間優勝車 1991年)

こちらは1991年のスパフランコルシャン24時間で優勝したR32のZEXELスカラインGT-R。

このレースでは2位ポルシェ911に20周以上も引き離し、独走で総合優勝を決めたマシンだそうです。

国内のみならず世界でもとんでもない速さだったR32 GT-Rは、日本の誇りです。

スカイラインGT-RグループA(JTC 1993年)

こちらは1993年の全日本ツーリングカー選手権に参戦した、チームクニミツのR32スカイラインGT-R。ドライバーは高橋国光と土屋圭市の師弟コンビでした。

第2戦オートポリス戦では優勝を果たし、伝説の29連勝のうちの1勝を上げています。

圧倒的な強さでシリーズを席巻したスカイラインGT-Rでしたが、強すぎるが故にシリーズが消滅し、スカイラインを参戦させるために全日本GT選手権(JGTC)が始まった、と言われています(諸説あり)。

スカイラインNISMO GT-R LM(ル・マン24時間 1996年)

こちらは1996年のル・マン24時間に参戦した、9代目スカイラインのR33 GT-Rをベースに製造された車両です。

GT-R NISMO GT3(ブランパンシリーズチャンピオン 2015年)

こちらはブランパンシリーズの車両。

ブランパンシリーズといえば2011年から始まったFIA-GT3車両を使った耐久レースですが、2015年シーズン、アウディR8、フェラーリ458、BMW M4、メルセデスSLS、ベントレーコンチネンタル、アストンマーティンヴァンテージなど、波いる競合を撃破して、日産GT-R(R35)がプロクラスのシーズンタイトルを獲得しました。

一見するとスーパーGTに参戦するGT-Rと似ていますが、じっくりと観察すると細部がかなり誓っていますね。

GT-R(FIA-GT1 2011年)

2010年に発足したFIA-GT1選手権。日産は1990年代のスポーツカー世界選手権(SWC)以来、20年ぶりに世界選手権に参戦します。

そしてシリーズ2年目の2011年に、このR35 GT-Rでドライバーズチャンピオンを獲得しました。

日本では滅多に観られないGT1車両ということで、じっくりと観察したかったのですが、残念ながら車間が狭く舐め回すように観られない・・・。

貴重なマシンを細部まで堪能できるようにしてもらいたいと切に願います。

最後に

私は自動車博物館を訪れるのが好きで、これまでにトヨタ博物館富士モータースポーツミュージアム、スズキ歴史館、ホンダコレクションホールホンダレーシングギャラリーヤマハコミュニケーションプラザと、多くの施設に行きました。

自動車メーカーが運営する博物館は、思考を凝らした展示で、実に楽しめるものでした。

しかし日産が運営するヘリテージコレクションは、工場だった建物にただ車両が置かれているだけで、簡単な説明書きのみ。

ホンダレーシングギャラリーや富士モータースポーツミュージアムなどに見られる高度なライティングや、スズキ歴史館のような車両の周囲に当時の時代を再現するするような凝った仕掛けは、まったく無く、日本を代表する自動車メーカーの博物館なのに意外な感じでした。

ただ、ガイドの丁寧な説明と、長い歴史を誇る日産の歴史的名車たちが所狭しと置かれており、それを予約した20人ほどだけで堪能できることに関しては、自動車好き、そしてモータースポーツファンとしてはなかなかの環境でした。

こんな車両を多くのファンに公開しないなんて勿体無い。

今は経営面で苦戦している日産ですが、復活した暁には素晴らしい自動車ミュージアムを建設して、素晴らしいライティングや思考を凝らした展示方法で、たくさんのファンにこの歴史的な名車を公開してもらいたいと強く思いました。

ということで日産ヘリテージコレクションの観覧記はこれまで。最後までご覧いただきましてありがとうございました。

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大福
モータースポーツをこよなく愛す、セナプロ世代の四十代。 サーキット観戦デビューは、1996年フォーミュラニッポン第7戦の富士スピードウェイ。ど迫力のエキゾーストノートとタイヤの焼ける匂いを実感し、それまでテレビでしか観戦してこなかった事を悔やむ。以降、F1・WEC・スーパーGT・スーパーフォーミュラなどを富士スピードウェイ・鈴鹿サーキットを中心に多数観戦する。