F1は、有数の技術者が膨大な予算で開発される世界No.1のレーシングマシンであり、その技術の進化はとどまることを知らない。
しかし安全性の確保から、毎年のようにレギュレーションで規制が入るが、それでも、ラップタイムは年々速くなり続ける。
そこで今回は、コース変更が殆どないモナコ市街地コースの予選ラップタイムを参考に、日本人の多くがF1を見始めた1987年から、どれだけマシンが速くなったのかを見ていくことにしよう。
1980年代のモナコGP予選タイム
年 | 予選タイム | ドライバー | タイム差 (前年) | タイム差 (87年) |
---|---|---|---|---|
1987 | 1分23秒039 | N.マンセル | +0.412 | 0 |
1988 | 1分23秒998 | A.セナ | +0.959 | +0.959 |
1989 | 1分22秒308 | A.セナ | -1.690 | -0.731 |
主なレギュレーション変更
1987年
- ターボエンジン加給圧 無制限→4バール
1988年
- ターボエンジン加給圧 4バール→2.5バール
1989年
- ターボエンジン禁止
1987年から1988年にかけて、ターボの過給圧が無制限からそれぞれ4バール、2.5バールと徐々に下げられたため、前年に比べて予選タイムが上がっている。
しかし1989年、ターボが禁止されNAエンジンになってにもかかわらず、予選タイムが前年に比べて1.690秒も速くなっており、1987年のタイムも上回っているのが興味深い。
グランプリコースの中でもっとも低速で、パワーに頼らないコースレイアウトということもあるが、パワーからエアロダイナミクスを重要視したマシン設計をして、コーナーを速く走らせるように、マシンが大きく変わった年だった。
1990年代のモナコGP予選タイム
年 | 予選タイム | ドライバー | タイム差 (前年) | タイム差 (87年) |
---|---|---|---|---|
1990 | 1分21秒314 | A.セナ | -0.994 | -1.725 |
1991 | 1分20秒344 | A.セナ | -0.97 | -2.695 |
1992 | 1分19秒495 | N.マンセル | -0.849 | -3.544 |
1993 | 1分20秒557 | A.プロスト | 1.062 | -2.482 |
1994 | 1分18秒560 | M.シューマッハ | -1.997 | -4.479 |
1995 | 1分21秒952 | D.ヒル | 3.392 | -1.087 |
1996 | 1分20秒356 | M.シューマッハ | -1.596 | -2.683 |
1997 | 1分18秒216 | H=H.フレンツェン | -2.14 | -4.823 |
1998 | 1分19秒798 | M.ハッキネン | 1.582 | -3.241 |
1999 | 1分20秒547 | M.ハッキネン | 0.749 | -2.492 |
主なレギュレーション変更
1991年
- フロントウイング幅 1500mm以下→1400mm以下
1992年
- 予選用タイヤ(Qタイヤ)禁止
1993年
- マシン全幅 2150mm以下→2000mm以下
1994年
- レース中の給油解禁
- ハイテク禁止(アクティブサス・ライドハイトコントロール・トラクションコントロールなど)
1995年
- エンジン排気量 3.5L→3L
- ステップドボトム規定
1998年
- マシン全幅 2000mm以下→1800mm以下
- スリックタイヤ→グルーブドタイヤ
コース変更
1997年にプール入り口を改修し、この時にルイ・シロンと命名されたらしいが、現在はあまり浸透していないようで、一般的にはプール1つ目やプール入り口と呼ぶ。
全長が3.328kmから3.367kmにわずかに伸びた。
大きなレギュレーション変更が無かった1990年1991年は、毎年1秒近くタイムアップをしている。
注目すべきは1992年。この年から1周のみの寿命の予選用タイヤ(Qタイヤ)が禁止されたにも関わらず、前年に比べて0.849秒もタイムアップしている。
1994年はハイテクが禁止されたが、レース中の給油が解禁されたことから燃料タンクが小さくなり、タイムが大幅に更新している。
1995年のタイムダウンはエンジン排気量が3.5Lから3Lになり馬力が減ったのと、ステップドボトム導入によるもの。
その後1996年、1997年と、大きなレギュレーション変更がなかったため、タイムをかなりアップさせるが、1998年にマシンの全幅が20cmも狭くなったのと、グルーブドタイヤの導入でタイムを落としている。
次のページは、シューマッハからアロンソへ世代交代した時代の、2000年代のモナコグランプリ予選タイムの推移です。
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