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カスタマーエンジン使用F1チームの歴代搭載エンジンメーカー推移(1995-2020)

F1チームはエンジン(PU)を独自で開発しているチームと、シャシーだけを開発しエンジン(PU)は他のメーカーから供給を受けているチームがあります。

今回は他メーカーからエンジン(PU)の供給を受けているチーム、いわゆるカスタマーエンジン使用F1チームの供給先エンジンメーカーの推移を、以下の期間に分けて見て行きたいと思います。

3,000cc NA時代 (1995-2005)

ホンダエンジンを搭載したジョーダンEJ12 ホンダコレクションホールにて

※ 表は左右にスライドします

マクラーレンティレルリジェウィリアムズフットワーク

アロウズ
ミナルディベネトンジョーダンザウバーシムテックパシフィックフォルティプロストスチュワートローラB・A・Rジャガーレッドブル
196619681976197819781985198619911993199419941995199719971997199920002005
1995MYMHRHaFo1995RPFoFoIFo19951995
1996MYMHRHaFo1996RPFoFoFoFo19961996
1997MFoRYHa1997RPF1997MHFoFo1997
1998MFoMcHaFo1998McMHF1998PFo1998
1999MStHaFo1999StMHF1999PFoSt1999
2000MBStFo2000StMHF2000PHC2000
2001MBAFo2001RHF2001FHC2001
2002MBCA2002HF2002HC2002
2003MBC2003FoF2003HC2003
2004MBC2004FoF2004HC2004
2005MBC2005TF2005HC2005

M=メルセデス・F=フェラーリ・H=ホンダ・R=ルノー・T=トヨタ・B=BMW・P=プジョー・Fo=フォード・Y=ヤマハ・C=コスワース・MH=無限・Mc=メカクローム・St=スーパーテック・A=アジアテック・Ha=ハート・I=イルモア

1994年にアイルトン・セナ氏の悲しい出来事を機に、安全上の理由からF1マシンの速度を下げる一環としてエンジン排気量がそれまでの3,500ccから3,000ccに変更されたのが1995年。

当初はハートやイルモア、無限などのエンジンチューナーが参戦していましたが、次第に自動車メーカーだけがエンジン供給をする時代に変わっていきます。

名門マクラーレンは3,000cc時代が始まった1995年からメルセデスエンジンを搭載し、以降2014年までの20年間にわたり使用します。

ティレルやリジェなど、名門F1チームの撤退が撤退したのもこの時代でしたね。

同じく名門ウィリアムズはルノーとともに一時代を築いていましたが、1997年を最後にルノーが撤退すると、ルノー系のメカクローム→スーパーテックに変更し、2000年からはF1復帰したBMWとタッグを組みます。

日本の民間資本を元に設立したアジアテックがF1エンジンを供給したのもこの頃でした。

プジョーエンジンをベースに開発したエンジンで、アロウズとミナルディに供給しましたが、元来戦闘力の低かったプジョーエンジンなだけに苦戦をし、参戦は2年という短い期間でした。

ジョーダンは様々なエンジンを搭載したチームとして知られていますが、3,500cc時代にフォード・ヤマハ・ハートのエンジンを乗せ、3,000cc時代にはプジョー・無限・ホンダ・フォード・トヨタのエンジンを搭載し、デビューした1991年から撤退した2005年までの間、実に7つのブランドのエンジンを搭載しました。

ザウバーはメルセデスとともにF1に参戦しましたが、そのメルセデスがマクラーレンと手を組むと翌年からフォードエンジンを搭載し、1997年からフェラーリエンジンをペトロナスブランドで搭載し、フェラーリのジュニアチームとしての色が濃くなっていきました。

リジェを買収して参戦したプロストグランプリも、今となっては懐かしい存在です。

参戦初年度はリジェから引き継いだ無限エンジンを搭載しましたが、純フランスチームにこだわった4度のF1ワールドチャンピオンの代表アラン・プロスト氏は、翌年からフランスのプジョーエンジンを搭載します。

しかしプジョーエンジンの戦闘力不足は否めなく、最終年はプロスト氏が現役時代に大ゲンカして解雇されたフェラーリのエンジンをプライドをかなぐり捨てて搭載しましたが、せめてものプライドかフェラーリから名前を拒否されたのかは定かではありませんが、バッジネームはエイサーでした。

同じくF1ワールドチャンピオンでも、プロスト氏と対照的に上手にやったのがジャッキー・スチュワート氏でした。

スチュワート氏はフォードと密接な関係にあり、自身が代表を務めるスチュワートグランプリは参戦最終年に初優勝を遂げ、資産価値を上げてフォードに売却しました。

そのフォードはジャガーブランドで参戦するも、目立った成績を残せぬままレッドブルに売却されます。

ティレルを買収したB・A・Rは、日本人にとって馴染みの深かったチームですね。

ホンダエンジンと密接な関係から佐藤琢磨選手を起用し、最終的にホンダのワークスチームになりました。

2,400cc V8NA時代 (2006-2013)

メルセデスエンジンを搭載したブラウンGP BGP001

※ 表は左右にスライドします

マクラーレンウィリアムズザウバーレッドブルM
F
1
トロロッソスーパーアグリスパイカーフォースインディアブラウンG
P
ロータスレーシング

ケータハム
H
R
T F
1
ヴァージンマルシャロータスF
1
196619781993200520062006200620072008200920102010201020122012
2006MCBFT2006CH20062006
2007MTBR2007FHF20072007
2008MTBR2008FHF20082008
2009MTBR2009FMM20092009
2010MCFR2010FM2010CCC2010
2011MCFR2011FM2011RCC2011
2012MRFR2012FM2012RCCR2012
2013MRFR2013FM2013RCR2013

M=メルセデス・F=フェラーリ・H=ホンダ・R=ルノー・T=トヨタ・B=BMW・C=コスワース

F1は2006年から2013年まで、2,400cc V8エンジンで争われました。

名門マクラーレンは、3,000cc時代からひきつづきメルセデスエンジンを搭載します。

ウィリアムズはBMWの資本参加を拒否したため決別し、自動車メーカーではないコスワースエンジンを搭載し、この頃から低迷期が始まります。

逆にザウバーがBMWの資本を投入されBMWザウバーになり、エンジンも9年搭載されたフェラーリエンジンと決別します。

※2006年から2009年のBMWザウバーはカスタマーチームではないため今回の趣旨に当てはまらないが、ザウバーの項ということで便宜上提示した

レッドブルは前述したとおり、3,000cc最終年にコスワースエンジンでデビューした後2006年にフェラーリエンジンを搭載。

そして2007年から2018年までの12年間ルノーエンジンを搭載し、2010年から2013年まで4年間連続でチャンピオンを獲得し、黄金時代を送ることになります。

レッドブルの兄弟チームであるトロロッソは、レッドブルから遅れること1年で前年のレッドブルのマシンにそれに搭載されていた3,000ccコスワースエンジンを回転を絞った上で搭載し参戦を開始します。

そして翌年から独自開発したマシンにフェラーリエンジンを搭載しV8 2,400cc時代を送ります。

鈴木亜久里氏が代表を務めた懐かしのスーパーアグリは、ホンダのジュニアチームとして発足し、初年度こそ2002年型のアロウズに変更を加えてホンダエンジンを搭載しましたが、翌2007年・2008年は前年型のホンダマシンをベースに、同じくホンダエンジンを搭載して参戦しました。

サブプライムローン問題から端を発したリーマンショックを機にホンダが第3期F1活動を終了したため、開発していたホンダRA109になる予定だったマシンにメルセデスエンジンを搭載して参戦したのがブラウンGPでした。

ブラウンGPは2009年シーズン序盤を圧倒的なマシン性能で勝ち続けたため、もし2009年仕様のホンダエンジンの性能が劣っていても、企業としての資金力でチャンピオンを獲得できたのではないかと、今でも悔やまれます。

FIAの意向から3つの新チームが参戦したのが2010年でした。

自動車メーカーとのコネクションを持たないロータスレーシング・HRT F1・ヴァージンの3つの新チームは、すべてコスワースエンジンを搭載し参戦を開始しましたが、現在ではすべてのチームが撤退しています。

1,600cc V6ターボPU時代 (2014-)

現在はルノーPUを搭載するマクラーレン 2019年日本GPにて

※ 表は左右にスライドします

マクラーレンウィリアムズザウバー

アルファロメオ
レッドブルトロロッソ

アルファタウリ
フォースインディアケータハムマルシャロータスF
1
ハースレーシングポイント
19661978199320052006200820102012201220162018
2014MMFRRM2014RFR2014
2015HMFRRM2015FM2015
2016HMFRFM2016F2016
2017HMFRRM2017F2017
2018RMFRHM2018FM2018
2019RMFHH2019FM2019
2020RMFHH2020FM2020

M=メルセデス・F=フェラーリ・H=ホンダ・R=ルノー

最後に、エンジンからハイブリッドパワーユニットに変更された、2014年以降のカスタマーチームの供給メーカーについて見ていきましょう。

マクラーレンは25年続いたメルセデスとの関係を解消し、2015年からF1に復帰したホンダパワーユニットを搭載します。

しかし、そのホンダ製パワーユニットがパワーも信頼性も無く、関係は3年で解消され、ルノー製パワーユニットに変更しました。

ウィリアムズはパワーユニット時代からメルセデス製を搭載し、当初はその圧倒的なパワーから成績が上回りますが、各パワーユニットが馬力を上げると徐々に成績は低迷して現在はテールエンダーに沈んでいます。

ザウバーは2,400cc V8時代にBMWが撤退した後、かつてのようにフェラーリの助ニアチームの色を濃くしており、現在は同じくフィアット傘下のアルファロメオと名前を変えました。

長年にわたりルノーエンジンの主力チームとして活躍したレッドブルは、パワーユニット時代以来ルノーの開発に不満を抱くようになり、2019年からホンダ製パワーユニットを搭載して参戦しています。

兄弟チームであるトロロッソ(アルファタウリ)は、レッドブルより1年早くホンダ製パワーユニットを無償供給され、年々速さを増しています。

ちなみレッドブルがルノーパワーユニットの性能の低さから苦言をメディアに連発したため、トロロッソはその煽りを受けるカタチでルノーから供給を断絶され、2016年のみフェラーリ製パワーユニットを搭載しました。

フォースインディアは参戦2年目の2009年からメルセデスより供給を受けており、パワーユニット時代も関係を継続し、撤退まで使用しました。

そのフォースインディアのあとを継いだレーシングポイントも、メルセデス製パワーユニットの供給を受け参戦しています。

レーシングポイントは2021年からアストンマーティンに名称が変更しますが、市販のアストンマーティンもメルセデスからエンジンの供給を受けていることから、今後もメルセデスとの関係が継続されると思われます。

2016年からF1に参戦するハースは、当初からフェラーリよりレギュレーションで許されているさまざまな部品の供給を受けており、パワーユニットもそのひとつです。

最後に

F1はドライバーズチャンピオンシップとともにコンストラクターズチャンピオンシップが設けられていることからも分かるとおり、F1においてコンストラクター=シャシー製造会社は大きな地位を占めています。

しかしそのコンストラクターが製造するF1マシンは、エンジンが無いと走ることさえ叶いません。

そのことからもF1エンジンは最重要部品であり、チームが存続するためにも供給先の確保は最重要課題です。

今回は1995年以降のF1チームの推移を見てみましたが、ティレルやリジェといった名門チームが資金難からエンジンを確保できずに、撤退を余儀なくされました。

現在はすべてのチームがエンジン(PU)を確保できるようコンコルド協定で規定されていますが、メルセデス・ホンダ・ルノーが後世にわたりF1エンジン(PU)を供給する保証は無く、特殊な技術を必要とするF1エンジンを新たな自動車メーカーが製造することも簡単ではありません。

私的には・・・。

F1エンジンは現在の複雑なシステムのハイブリッドパワーユニットではなく、エンジンチューナーでも開発できる超高回転のエンジンになってくれたら供給問題も解消され、何よりも素晴らしい爆音が戻ってくる・・・そんなエンジンを希望します。

以上、今回はカスタマーエンジン使用F1チームの1995年から2020年までの歴代搭載エンジンメーカーを調べてみました。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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大福
モータースポーツをこよなく愛す、セナプロ世代の四十代。 サーキット観戦デビューは、1996年フォーミュラニッポン第7戦の富士スピードウェイ。ど迫力のエキゾーストノートとタイヤの焼ける匂いを実感し、それまでテレビでしか観戦してこなかった事を悔やむ。以降、F1・WEC・スーパーGT・スーパーフォーミュラなどを富士スピードウェイ・鈴鹿サーキットを中心に多数観戦する。